もしも死が見えたら…? ダークでスタイリッシュなファンタジー

ライトノベル

2011/9/12

空の境界(上)

ハード : PC/iPhone/iPad 発売元 : 講談社
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:電子文庫パブリ
著者名:奈須きのこ 価格:540円

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事故によって2年間も昏睡状態にあった記憶喪失の少女が、死にまつわる事件に身を投じていく、ダークでスタイリッシュなファンタジー。

伝奇小説なのですが、その独特な雰囲気から、まったく新しいジャンル「新伝綺」と称される。幻影的で耽美的な雰囲気。霊、魔術、異能、死が見える…といった非日常なキーワード。そもそも、両儀式という少女の名前からして、すでに妖しい匂いが。端麗でスラっと着物をまとっている姿なんかも、好きな人にはウッと胸にくるバキューム設定です。

「厨二(中二)の伝説的金字塔」などと言われたりもする本作ですが、特に中学二年生くらいの不安定で多感な時期って、インパクトがある形式美や様式美に傾倒しがちなものなんですよね。

音楽でいうと、ネオクラシカルメタルのYngwie Malmsteen(イングヴェイ・マルムスティーン)、日本でいうとX JAPANなんかの、どこか危なく妖しい、洗練された非日常的な美しさ。肉々しい感じがしない崇高なロック。そんな音楽のような病みつきになる中毒性が、本作にはこれでもかというくらいに充満しています。

ハマる人はとことんハマる。クセになる。様式美が病魔だとするのなら、『空の境界』は、やはり厨二病の生産機なのでしょう。

日常にどこか物足りなさを感じている大人だって、ときにはファンタジーな世界に浸ってみたい。厨二病バンザイ。

そして、酒がなくたって、世界観にすっかり酔えます。禁酒中の人、朗報ですよ。

ポエムのような淡白な描写

右側にくだんのビル。屋上にいくつか妖しい物体が

太宰治の「富士には月見草がよく似合う」もとい、式には着流しがよく似合う