タイトルに尻込みしないでほしい! 声に出して笑うこと請け合いの恋愛エッセイ

小説・エッセイ

公開日:2013/1/31

負け美女 ルックスが仇になる

ハード : PC/iPhone/iPad 発売元 : マガジンハウス
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:電子文庫パブリ
著者名:犬山紙子 価格:599円

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世の中、いろんな恋や愛の形があるんだなぁ…としみじみしたのは感動したからというよりも、おかしみが一回りしたら味わいになったといいましょうか、なんていうか、活字で声出して笑ったのは久しぶりです、まじで。“負け”という響きから連想していた内容とはまったく違う、滑稽で愉快で脱力した安心感のある恋愛エッセイ(なのか?)でした。

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もっとこう、指南書みたいなものかと思っていたのですよ。「いくら美女でもこんなんじゃモテないよ」とか「美女なのに恋愛力低い女性が急増中!」とかそういう社会現象的なことにも触れつつ、モテない美女の実態を暴くというようなそういう毒まじりのエッセイなのかと。ですが、読んでみたらちがった。もちろん、コンセプトとしてはそうなんでしょうけど、印象としては全然ちがった。

第1話こそ、「美人なのに自虐と下ネタ完全需要でむしろノる」モテない美女の話でしたが、「貰い物の大量AVを、見なきゃ悪いと流しっぱなしにして生活した結果、ネギ=喘ぎ声となるほど浸食されて性欲がゼロになった美女」の話や、「処女をこじらせ、下ネタ全開の替え歌をカラオケで熱唱した美女の、こじらせた恋愛話」とか「童貞男の女神となった美女」の話など、犬山さんが見聞きしたさまざまな美女体験を、犬山さん直筆のイラストつきで軽快にコミカルに紹介していくというものだったのです。

なんかもう、美女とかイケメンとかあんまり関係ないよね、そこまでいくと。っていう話もあれば、美女だからこその「セクハラ親父の華麗なる撃退」みたいなお話もあったり、バリエーションはさまざま(みなさん美女だからこそ恋愛ネタもいろいろ引き寄せてるというのはもちろんあるでしょうが)。読み終わってみると“負け”ってなんだ……?という気持ちにもなりますし、冒頭のように、世の中いろんな人がいて、いろんな恋や愛を育んだりこじらせたりしているのだなぁ、というしみじみした気分にもなるのです。

たぶん、犬山さんって女性が好きなんでしょうね、全編通して愛が溢れてる。自虐も屈折感もシニカルな目線もあるんですが、卑屈さはなくて読んでいて気持ちがいい。まあ、私は中高と女子校&大学3年間は女子寮にいた、という人間で「女子」(あえて使わせてもらう)というイキモノが大好きなので、よけいにそう感じたのかもしれません。やあ、楽しかった。コミック化もしてほしいなーなんてひそかに切望している作品です。


美女好きで、ご自身も美女な著者が気づいた「意外とモテてない美女」の実態とは

各章にナイスタイミングで犬山さんのイラストつき。最初に人物紹介もあり

さらりと、胸に刺さる言葉が放たれたりもする。そ、そうなんですよね~…

縦書き・横書きにも選択できるのがよい! この本は、横のほうが読みやすいかも