「ダ・ヴィンチ電子書籍アワード2011」大賞受賞者による、待望の新作絵本
公開日:2013/2/4
何が素晴らしいってもう、動画と語りと音楽と、その複合で構成される不可思議で神秘的な世界観ですよ。それが実は植物の生態解説に繋がってるっていうんだからもう、見事としか言いようがありません。エドワード・ゴーリーとか、ちょっぴり残酷でファンタジックな絵本が好きだった方には超絶おすすめです。
「ダ・ヴィンチ電子書籍アワード2011」大賞を受賞した『ヌカカの結婚』に連なる最新作である『バンクシアの誘い火』。
『ヌカカ~』は絵本仕立てのストーリーから虫や昆虫の生態を解説するという画期的なものでしたが、今回のテーマは植物。バンクシア、って言葉のチョイスがよいですね。これ、れっきとしたオーストラリアの植物で、わかる人には「あー、植物のあれの話ね」ってわかるんだと思うんですけど、無知な私は「なんだか東洋の島国の民族が行う儀式みたい」なんてわくわくしながら読みはじめたのでした。科学絵本ってわかってたはずなのに!
しかし冒頭にも書いたように絵本としてのクオリティも高い! 働きたくない、永遠に困らないだけの食料を供給されることの代償に、大事なものを失ってしまった男の話(episode03「ものぐさ男」)、生活の糧を稼ぐため砂糖液をつくっていた男が、悪天候で船の来ない日々が続いたあげくに命が尽き、しまいには腐敗した砂糖液で島がおおわれてしまう話(episode06「砂糖液作り」)、攻め入られた崖上の城から母を残して脱出した皇子の話(episode09「脱出」)などなど、全10話が収録。
どれもこれも最後に「解説」と称して植物の生態を説明してくれるので、あぁ理解しやすくするための前フリだったのだな、と思うのですがでも、それだけでは割り切れない何かが読後に胸に残ります。
特に印象に残ったepisode07「石になった子ども」は画像付きで紹介しますね! このえも言われぬ読後感を、存分に味わっていただきたい1作です。
一番印象に残ったepisode07「石になった子ども」。ある母のもとに双子が生まれましたが…
ひとりを愛せず、母は物置へ閉じ込めます
そして常に撫で続けた愛しい子ども。しかしなぜかその子はある日突然、石の姿に!
驚いた母が物置の子どもを見に行くと、そこにいたのは…
好きなエピソードから選べるので、気になったタイトルからどうぞ。音声BGMつきで読むのがおすすめです!