昭和初期のナンセンスエロな発禁本は、エロというより美しい!

小説・エッセイ

2013/2/13

エロエロ草紙

ハード : iPhone/iPad/Android 発売元 : 竹酔書房
ジャンル:趣味・実用・カルチャー 購入元:紀伊國屋書店Kinoppy
著者名:酒井潔 価格:0円

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エロエロ草紙は上品なエロと、朗らかなナンセンス、即ちウルトラ生活の二要素を具備するもの、此の書を見て、不感性(ルビ:インポテンツ)なる者はおよそ退屈の権化として、怨敵退散である――と、あとがき(原文は「自跋」)の一節にあるように、本書は昭和5年発行のエロ風味の読み物だ。

昭和初期といえば、エログロナンセンスという扇情的で猟奇的な風俗が流行した時代で、本書もそうした中の出版物と考えられる。当時、類似のエロ本が多くあったのか、それらがどのくらいエグイものだったのかなど、詳しいことは不明だけれど、実はこの本はその内容ゆえに製本途中で発禁処分になったという。その意味では、当時の「エロ情報の解禁レベル」というのを垣間みることができる貴重な本ともいえるだろう。

中をめくってみると、たしかに胸元をあらわにした女性の写真やイラストが豊富。下半身はつねにかくされているが、ギリギリ感がないので、この時代は上半身露出だけで十分エロだったのかと思われる(ちなみに江戸時代の艶本のほうが直接的でよっぽどエログロ)。写真は当時流行したモダンガール(通称:モガ)的な断髪洋装の女性たちばかりで洗練されており、イラストや本そのもののレイアウトも美しく新鮮で、エロというより抜群にお洒落な本だ。全体にとても知的で上品な感じで、おそらく大正~昭和初期のモボ/モガ文化のテイスト好きや、戸川純の「ゲルニカ」好きとかの方なら、特にハマるはず。

なお、イラストや写真と交互に読み物がはさまれており、それがまた秀逸。主にナンセンス・エロな小話だが、昔っぽい大仰な言い回し感はあるものの、ニヒリズムがキラリとする知的センスがいい感じだ。「不景気で若い男には金がなく、若い女が老人とつきあう風潮がすばらしい」と絶賛する「すべての若い女を老人へ」など、ネタとしても今に通じて十分おもしろく、細かいところまで楽しめる。

ちなみに、全体的にナンセンスでバラエティに富んだ雑誌のテイストには、なぜか80年代に人気だった『ビックリハウス』的な感覚を思い出した。つまりこのあたりの雑誌に、日本のサブカルチャーの萌芽を見ることができるということなのかもしれない。驚くべきは、写真やイラストの収集や編集、装丁、執筆を酒井潔自身がすべてやったと思われること。こういうマルチ感も極めてサブカル的だ。

余談だが、表表紙から裏表紙まで、印刷の粗さもそのままに、まるごとデータ化されているので、見た目のざらざらした体温のある質感と、データを繰る指先の冷たい質感のアンバランスがなんとも奇妙な感覚。それにしても、こういう貴重な本に気軽にアクセスできる試みは非常にうれしい。


内表紙 表表紙の線画バージョン?

見返しもそのままデータ化 蔵書印もあり

扉 本編の写真もこのようなトーキー女優風

ラインや構図が粋な漫画風イラスト カフェの女給というのがいかにも当時

口絵イラスト。随所にこうした色っぽいモガが登場