4つの時代を駆け抜けた“八重”にみる日本人の国民性

更新日:2013/2/20

日本人の魂と新島八重(小学館101新書)

ハード : PC/iPhone/Android 発売元 : 小学館
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著者名:櫻井よしこ 価格:540円

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今年の大河ドラマ『八重の桜』で脚光を浴びた新島八重という女性は、江戸時代から昭和までの動乱の時代を生き抜きました。当時はまさに旧から新への過渡期。日本中の人々が混乱の渦に巻き込まれました。そんな中、彼女は極めて能動的に自分の人生を歩みます。著者である櫻井氏は、八重の行き方や考え方に大きな影響を与えたと思われる「会津」という土壌に着目し、その中に古くから引き継がれてきた「日本人らしさ」を発見しました。本書では八重の生涯を追いつつ、「日本人の魂」とは何かを追求していきます。

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八重の育った会津藩には幼少から教育を受ける土壌がありました。「ならぬことはならぬものです」という言葉を一度くらいは耳にしたことがあるのではないでしょうか。これは近所の子供同士で編成される「什(じゅう)」というグループで習う掟の締めの句です。会津の子供たちはそうして集団生活での生き方、道徳を学びます。幼い頃から社会に属して生きた会津の人々は、自分ではなく他者を、ひいては公を重んじます。こういった道徳観は日本人には馴染み深いのではないでしょうか。今でも親が子供を叱るときにはよく、「ほかの人の迷惑になることをしちゃいけません」と言ったりしますよね。普段の何気ない言葉の中にもやはり、日本人らしさは身を潜めているようです。

日本人の国民性としてもうひとつ挙げられるのは、その寛容さであると櫻井氏は言い、以下のように闊達な八重のエピソードをあげています。夫の影響で洗礼を受けた八重ですが、茶道にのめり込むうちに禅に出会い、その後建仁寺管長から袈裟を授けられたといいます。八重がキリスト教から仏教に帰依したのではないかとマスコミにとりあげられた際八重は、「キリスト教徒だからといって他宗の教えを聞いてはいけないという道理はない」と一蹴するのです。こうした何事も受け入れる精神、確かに日本人らしいと言えるかもしれません。節分やお盆の行事があるかと思えばハロウィンやクリスマスなど外国の行事まで楽しめるのは日本人くらいなものでしょうから。(ブッダとキリストが友人関係! というギャグマンガまであるくらいですし)

八重の生き様は今の私たちから見てもかっこいいです。自分の信じる道を歩き、それでいて独りよがりではなく常に他者のことを考えて生きています。人を思いやり、自分らしく生きる。激動の時代の最中、八重は素晴らしい日本人の国民性を体現していました。


会津藩独自の什

什の掟

男装の新島八重
(C)櫻井よしこ/小学館