「苦く」かつ「甘い」、サプライズ満載の短編集

小説・エッセイ

2013/2/15

あなたに似た人

ハード : Windows/Mac/iPhone/iPad/Android/Reader 発売元 : 早川書房
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:紀伊國屋書店Kinoppy
著者名:ロアルド・ダール 価格:756円

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サプライズがあってかつソフィスケイテッドな短編集の私のベストを順不同に並べるとするなら、

『ベスト・オブ・サキ 1・2』 サキ(ちくま文庫)
『まっ白な嘘』 フレドリック・ブラウン(創元文庫)
コーネル・ウールリッチの短編集どれでも(白亜書房)
『かむなぎうた』 日影丈吉(社会思想社)
本書『あなたに似た人』

という感じになる。

中でもロアルド・ダールの『あなたに似た人』は「苦さ」に特徴がある。どの短編も多からず少なからず、苦みを口の中に広げてくる。にもかかわらず、次の一編をどうしても読みたいと読み手の指をページに引きつける、「甘さ」も魅力として備えている。「苦く」同時に「甘い」。ビターチョコレートみたいな味わいだ、といったら軽薄に堕するか。

訳者・田村隆一によるあとがきの中に、ダールの魅力を表した都筑道夫の一文が引用されていて、ダールはふたつのことしか書いていないと指摘している。いわく、賭けに熱中する人間の怖さと、想像力の怖さだ。

前者でいえば冒頭の「味」という作品。相手のひとり娘を賭代にワインの産地当てに挑む美食家の男の物語。産地の候補を次々と数え上げてはしぼり、父親をじりじりと追い詰めていく緊迫感。それが一挙に崩れるラストは、まるで読み手こそ極上のワインを振る舞われたかのように魅力的だ。

また、「おねがい」という作品なら、ひとりの少年がかさぶたをはがしているところから始まり、そこからどんどん空想が膨らんでいき、もちろん彼の夢想の面白さは保証されているわけだが、空想が彼をどこへ連れて行くか。それは恐ろしい。

が、すべては他人事じゃない。『あなたに似た人』とは、12編の短編のどの登場人物も「あなた」つまり読み手そっくりだという意味だから。

ミステリとしての大傑作、「おとなしい凶器」は絶対のおすすめなんである。「コロンボ」や「古畑任三郎」の世界を思わせる。


最初の短編「味」の出だし

男は賭けの代償に娘をくれと父親に掛け合う

どこにでもある家庭の風景 しかし突如としてとんでもないことが起き、さらにとんでもない結末にたどり着く