ロマンというスパイスがかかったSF短編集

公開日:2013/3/2

Spirit of Wonder

ハード : PC/iPhone/iPad/Android 発売元 : 講談社
ジャンル:コミック 購入元:eBookJapan
著者名:鶴田謙二 価格:540円

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SFアクションばかり見ていた僕に「SFはロマンにもなりえるんだよ」と再認識させてくれたのが作者である鶴田謙二さんです。

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世の中は「iPS細胞」や「IT技術の進化」など、おそらくはロマンと思われていた技術が次々と目に見える形で登場しており、これによって恩恵を受けている側面もあります。しかしその反面、人々が思いを馳せた夢ともつかない願いが成就されてしまうと途端にその願いは色あせてしまい、ただの道具と成り下がってしまうのもまた事実です。僕がSFというジャンルが少しずつ輝きを失っているように感じるのは、そうした現実がSFに追いつき始めているからかもしれませんね。

『Spirit of Wonder』はそんな失われかけていたSF心を呼び覚まし、ロマンというスパイスで大人の味へと昇華してくれるまさに「魂の不思議」といった作品です。

いくつもの短編に連なり構成されている本作ですが、実はお恥ずかしながらに所々と理解できない理論が飛び交うこともしばしばで「自分は学がないなあ」なんて思ったりもしたのですが、それでも良いんです(笑)。空想に思いを馳せる雰囲気さえ満喫できれば、それに越したことはありません。それに理解できてしまっては、そのロマンが失われてしまいますからね(笑)。「何か良くわかんないけど、すごいことが起きているのは分かる」みたいな感覚が僕にとってのSFの楽しみ方なので、手が届きそうで届かないもどかしさがSFの美味しいところなのです。

とはいえ、本作で扱われるSFというのも作中では極々個人的な私情で使われることがしばしばで、「原子力で湯を沸かす」といった類のとても壮大な装置で意外とどうでも良いことを実現しようとするようなオチがよく使われるのですが、そういった茶目っ気がとても面白いと思いました。SFのロマンというのはそういう身近なとこに潜んでたりするもので、『Spirit of Wonder』はそんな一見地味なネタでも拾い上げて魅力的に仕上げてしまうので、読み手としてはもうその雰囲気に浸かるだけで良いのです。


どこでもドアに通じる、瞬間移動のロマン

科学者というのはいつの世も得意げに科学を語らいます

僕が好きなチャイナさんシリーズです

科学とは無縁なチャイナさんですが、入居者の発明家ジムに夢中です

科学はロマンする、その一部をご覧あれ
(C)鶴田謙二/講談社