「相手を下に見る」というエグイ心理と真摯に向き合う心理的黒歴史エッセイ

小説・エッセイ

2013/3/6

下に見る人

ハード : Windows/Mac/iPhone/iPad/Android/Reader 発売元 : KADOKAWA
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:紀伊國屋書店Kinoppy
著者名:酒井順子 価格:1,404円

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「いじめ」が大きな社会問題になる中、とある新聞で元いじめっこの記事を読み「とうとういじめっこ側のカミングアウトがはじまった」ことを認識した著者が、その事実に触発され、どちらかといえば「いじめっこ側」に位置したという幼少期から現在の自身の姿を振り返ったエッセイ。

周囲をどう捉えてきたのか、自分自身にツッコミをいれつつ客観的にながめてみると、そこに見えかくれするのは「相手を下にみる」というエグイ心理。いってみれば心理的黒歴史みたいなものだが、そのチクリと後ろめたい感覚を変に取り繕うことなく、ひょうひょうと正直にカミングアウトする姿はかえって真摯で好ましく、どこか『負け犬の遠吠え』での開き直りにも通じる“著者らしさ”も感じる。

しかし、この「相手を下にみる」という心理、大なり小なり実は誰もがかくしもっている感情のはず。他者との違いを認識し区別することで、「ああはなりたくない」「ああいう人と一緒にしないで」とかいう考えの根っこになる心理なわけで、こういった感情レベルなら思い当たる人多いのでは? かくいう私自身、ちっぽけなスケールではあっても文章を書く仕事をしたりしているせいか、つい必要以上に社会を「観察」するクセがあり、その視線には多分に「いじわる光線」が含まれているのは否めない。その根底にはもちろんこうしたブラックな感情もあるはずで、おまけに著者と世代が近いせいか数々の悪行(?)も「わかるわかる」と共感してしまうことも多々あり、もろもろ腑に落ちる本であった。もちろん反省しましたが…。

なお、本書は心理学や社会学の専門書ではなないので、そうした心理のメカニズムの探究などされているわけではないものの、「そういう気持ち持っちゃうのよね」という日本社会特有の自然法則みたいなものが何気なくあぶりだされている。昨今の「上から目線」「ドヤ顔」の効果への言及などもするどく、独自の「社会観察眼」が随所にイキている。問題はそうした黒い感覚とどう向き合うか。もちろん著者は人生指南などしないけれど、思わぬ気づきを与えて小さな戒めをもたらしてくれるのは確かだろう。


目次1 他者との「区別」を感じた人生の瞬間がテーマに

目次2 大人になった今も「違い」で判断する瞬間は多々あります

本文より

時折、こんなしんみりとした場面もありで、読者を飽きさせない