この笑いをオバンやオジンに独占させておくのはもったいない

小説・エッセイ

更新日:2012/3/7

有効期限の過ぎた亭主・賞味期限の切れた女房

ハード : PC/iPhone/iPad 発売元 : PHP研究所
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:電子文庫パブリ
著者名:綾小路きみまろ 価格:450円

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いまお笑い芸人ていうと、ボケとツッコミに分かれた二人組が主流で、似たようなボケに似たようなツッコミを延々とテレビではくり返して飽きもしないけれど、僕ら少年時代はいわゆるピン芸、ひとりでしゃべりを繰り出す「漫談」とか「物まね」とか話芸じゃないけど「奇術師」とかいった個性の強い芸人さんがたくさんいました。ついでにいっとけば、三人でトリオを組んでコントをやるグループも一杯いて、伊東四朗さんのいた「てんぷくトリオ」、ミステリー評論家でもある内藤陳さんのいた「ナンセンストリオ」、上岡竜太郎さんのいた「マンガトリオ」などなどは独自のギャグをたくさんもっていて、客席を荒れ狂う海のごとく湧かせていたものだけれどそれはちょっと別な話。

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このピン芸というのは、話術の緩急をお客の息をはかりながら自分ひとりで加減しなくちゃならないので漫才よりも過酷というか、孤独な芸であります。一度テンポを外したら、相手のツッコミの切れに頼るってことができない。

綾小路きみまろが登場してきたときに、これはご高齢の方を相手にした宴会の前説芸だなと思ったのです。体の調子の悪い箇所や政府の保険制度の落ち度なんかを自虐的な笑いに結びつけて座を盛り上げる毒舌でしょ。座さえ盛り上げればあとはお役ご免でひっんじまえばいい。まあ、僕は見なくていい演芸だなと、感じたわけです。

ところが、実際の口演を活字に起こした本書を読んで身勝手な思い込みを深く恥じましたです。

面白えと思ったんです。毒舌と、身もふたもない老後の悲観論と、お客への親しき貶めと。文化人類学で昔はやったトリックスターっちゅうやつですよ、綾小路は。世界の秩序をひっくり返す道化です。

まず、言葉が非常に丁寧に選んである。笑いに落とすときの一言が言葉の長さ、語感、ニュアンス、ともに考え込んであり見事なんです。いわゆる「トーク」といういまの笑いの主流の、べらべら喋っていく中でのずれた発言に「~してどうすんだよ」と突っかかる笑いの取り方でなく、自由に喋ってるように見えて実は綾小路は完璧に書き込まれた台本を演じている、演じている「芸」なのだと確認してしまったのでした。

また、おじさんやおばさん相手に、50歳はガタガタで、55歳はボロボロで、といった具合に同じような種類の事例を並べていって笑いに結びつけるパターンを頻繁に採用するのでございますが、これは江戸時代の草双紙から使われていた「吹き寄せ」という笑いの手法でして、綾小路のように上手に使えばいまだに大きな笑いがとれるという見本になってます。

これ対象をそっくり30代や20代に移して、本書のレトリックだけを抜き出してギャグを作るなら、日常のジョークや、新しい笑いの台本作りに充分使えんじゃないの、と思ったんでありました。
学研電子ストアには、ひみつシリーズを始めとする暇つぶしに最適なコンテンツが多々。
いつでもどこでも読める状態にしてくれれば、もっと利用率上がりそうなので。

こういう色紙が載ってるというのは…ま、最初の本だから許しましょう

つかみの部分、なかなかうまいと思うのです

生い立ちからキャバレー勤めの売れない時代の話まで…ま、最初の本だから許しましょう

キムタク系とかいって相撲をやってる高校時代…写真は載せるなぁ