美貌の古本屋店主と活字恐怖症の主人公が古書にまつわる奇妙な物語を綴る
更新日:2013/3/18
ビブリア古書堂の事件手帖 ~栞子さんと奇妙な客人たち~
ハード : PC/iPhone/iPad/Android | 発売元 : KADOKAWA / アスキー・メディアワークス |
ジャンル:小説・エッセイ | 購入元:BOOK☆WALKER |
著者名:三上延 | 価格:620円 |
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現在フジテレビにて放映されている、剛力彩芽主演月9ドラマの原作です。私はドラマは見ていないのですが、原作とは異なる部分が多く賛否両論あるようです。ただ、「原作を読んでみたい!」という需要を喚起するには充分な効果があったようです。累計470万部って、凄いですね。
書籍には、書籍に書かれた内容以外にも、さまざまな物語があります。著者がどういう思いでその書籍を書いたのか。どういう編集者が関わり、どのような経緯を辿って出版されることになったのか。読者はどういう経緯でその書籍を購入するに至ったか。どんな思いでその書籍に書き込みがなされたのか。なぜ手放され古書として流通することになったか。そういった書籍にまつわるさまざまな物語を綴ったのがこの作品です。
活字恐怖症の主人公が、亡くなった祖母が残した書籍に書き込まれた署名の謎について、もうひとりの主人公である活字中毒の古書店店主に尋ねるところから物語は動き出します。活字中毒の主人公は、書籍の内容だけではなく、書籍にまつわるさまざまな物語まで把握しているような「本好き」です。普段は、他人と目を合わせることもできない内向的な性格ですが、本のこととなると途端に頭脳明晰で饒舌になります。活字恐怖症の主人公は、本を読みたいという思いはあるので、活字中毒の主人公が語る書籍にまつわる物語に惹かれ、誘われるがままに古書店の手伝いをすることになります。
「事件手帖」とあるように、書籍を巡りさまざまな事件が起きます。活字中毒の主人公は足を怪我して入院しているのですが、書籍に残された物語の痕跡や、活字恐怖症の主人公からの情報だけで、アームチェア・ディテクティブ(安楽椅子探偵)のように事件の謎を解き明かしていきます。断片的な情報から鋭い洞察力を発揮し推理していくという構成は、米澤穂信氏の「古典部」シリーズとの類似性を感じますが、古書店を舞台にするという設定が非常にうまいと思います。
書籍に書かれた物語と、書籍にまつわる物語。本作品に取り上げられた絶版書籍『落穂拾ひ』が、復刻することになったというのもまた新しい物語でしょう。物語がまた新しい物語を生み出す。素敵な循環です。
1~3巻は短篇集になっており、各話のタイトルは著者と書籍の名称という体裁になっている
活字恐怖症の主人公と、活字中毒の主人公が初めて出会うシーン。口笛が吹けない不器用さというのがおもしろい
各話の扉絵はミステリアスだ
活字中毒の主人公は、普段はこんな感じ
署名や値札から、推理が展開される