もうひとつの万城目ワールドは極上の「童話」

小説・エッセイ

公開日:2013/3/19

かのこちゃんとマドレーヌ夫人

ハード : Windows/Mac/iPhone/iPad/Android/Reader 発売元 : KADOKAWA
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:紀伊國屋書店Kinoppy
著者名:万城目学 価格:496円

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一風変わったファンタジーを書かせたらもうこの人の独壇場、という作家が万城目学。本作はセンスの良すぎる元気いっぱいの小学生・かのこちゃんと、その外飼い猫で、どこか気品漂うアカトラの雌・マドレーヌ夫人が主人公。この2人(?)の視点から語られる「実はなんてことのない日常風景」を、雰囲気たっぷりに描いた作品。

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犬・猫を含む全ての登場人物があまりに魅力的。何よりかのこちゃんの目を通して見える世界は間違い無く遠い昔の我々にも「見えていた」はずの世界で、1篇を読み終えるたびになんとも言えない懐かしさに包まれる。ニヤリ、ではなく、読了までの始終をほぼ「ニコニコ」しながら読める、清涼感たっぷりの優良作。

誤解を恐れずに言うのであれば、凄く良くできた「童話」に他ならない。ただし、童話と言っても対象年齢はかなり広く、30年以上前に小学生だった僕も相当のめりこめた。だから、もう少し若い層にはもっともっと響くと思うし、可能であるのならぜひ現役の子どもたちに読んでほしいし、その年代の子どもを持つパパママたちには読み聞かせをしてあげて欲しい。この作品には幼いうちに知るべきことや考えるべきこと、感じるべきことの全てがある気がする。

動物の視点を扱った作品として見ても、満足度はかなり高い。猫の話す「外国語」とは何か? とか、主人公のマドレーヌはどうして「夫人」なのか? など、他のこの手の作品とは少し切り口の違う工夫が随所に散りばめられており、これがもう効果絶大。結果、ずっとニコニコしながら読んでいた僕が、最後にはホンのちょっとだけやられちゃいました…。

そういう作品であるにもかかわらず、直木賞候補にも挙がった異色作。そして、古くからの万城目マニアであれば、絶対に読んでおいて損のない設定もあり。かのこちゃんのお父さんは本屋大賞候補にもなった“あの作品”の“あの人”。そういうところを気にしながら読むとさらに楽しさが増すことと思う。

老若男女問わず、全ての人に。みんなきっと、すごく幸せな気分になれるはずなので。


カラー表紙画像アリは紀伊国屋BookWeb・Kinoppyの大きなアドバンテージ、マドレーヌ夫人がステキ!

Kinoppyは細部に拘って紙の本を再現、他の電子書籍リーダーと比較してもその出来は秀逸

余白設定や文字サイズ、フォントなど調整出来る項目多数、変更結果はほぼリアルタイムに反映されるのが便利

横書きモードで翻訳洋書の雰囲気を味わうのも楽しい、頻発する高尚なカタカナはほとんどが猫のお名前

目的のページを探しやすいサムネイル付きのしおり機能は本当に便利