伝説のコンビ作家による幻のショートショートがついに電子化!

小説・エッセイ

公開日:2013/3/22

地中より愛をこめて

ハード : Windows/Mac/iPhone/iPad/Android/Reader 発売元 : 講談社
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:紀伊國屋書店Kinoppy
著者名:岡嶋二人 価格:87円

※最新の価格はストアでご確認ください。

イェア、ディグ、ディグ! 伝説のコンビ作家、岡嶋二人の小説が全作まとめて電子書籍になったぜ! しかも岡嶋作品では唯一書籍未収録で、幻のショートショートとまで言われたこの『地中より愛をこめて』も、85円という可愛い値段で読めるってんだから、こいつぁディグだぜ!

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いきなり何だ? と思われるだろうが、実はこの「イェア、ディグ、ディグ!」は本書の主人公、モグラのDJが連呼するヤングモグラの流行語なのだ。「ディグ」というのは「掘りまくれ!」という意味らしいが、どうやらイケてるという意味でも使われてるっぽい。この物語は、そんなイカしたモグラのDJがリスナーからのお便りを読んだり曲をかけたり喋ったりしているときに、ある事件が起きて……というショートショートである。全編こんな語り口調で、読んでるとこっちまで浮かれちまうぜ、イェア、ディグ、ディグ!

このファンキーなモグラの物語は、ギャグであるとともに人間界のパロディであり、そして短いながらも人間への痛烈な皮肉でもある。他人(他モグラ?)が掘ったトンネルを勝手に暴走することの是非、穴が行き止まりのときは方向転換するのと後ずさるのとどっちがディグか、人間はモグラのオモチャを槌で叩いて遊ぶらしいなどなど、ドキっとしたりニヤリとしたり。が、そういう背景や比喩はさておいたとしても、陽気なDJモグラのトークを笑いながら読むだけでも楽しい。

岡嶋二人は、1982年に『焦茶色のパステル』で江戸川乱歩賞を受賞してデビュー、数々の名作・ヒット作を生み出しながら、89年『クラインの壷』を最後にコンビを解散する。現在は井上夢人氏が単独で活躍中だ。『地中より愛をこめて』は1984年に地方紙に掲載された掌編。岡嶋二人作品はすべて単行本化・文庫化されたはずだったのに、実は1作だけ残っていたのがコレなのだ。その後、ようやく2011年に講談社の雑誌『IN☆POCKET』に掲載されたが、いまだに書籍には収録されていない。

この度、岡嶋二人の全作品が一挙に電子化された。待ってはいたが、まさか全作一度にとは思ってなかったので驚かされた。本書もその一環でほとんどのプラットフォームで扱われているが、専用サイト「電本屋さん」で全作が入ったコンプリートボックスを購入すると、この『地中より愛をこめて』はおまけとして無料でプレゼントされるという。うーん、岡嶋二人、やっぱりディグだぜ!


物語は、モグラの死体から小豆大のテープレコーダーが見つかったという場面から始まる。テープレコーダーってのが、時代ですねえ