ライトノベルと純文学の橋渡し役的な異色作品-『文学少女』シリーズ(全8巻)

ライトノベル

更新日:2013/8/5

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■文学少女シリーズ(全8巻)/野村美月・竹岡美穂/エンターブレイン

2作品ごとに文学小説が題材となり、物語が進んでいく、異色な作品です。
本編で取り上げられる文学小説は、シリーズ1作目『“文学少女”と死にたがりの道化(ピエロ)』で太宰治の『人間失格』が、そして2冊目から順に・・・

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・エミリー・ブロンテ『嵐が丘』
・武者小路実篤『友情』
・ガストン・ルルー『オペラ座の怪人』
・宮沢賢治『銀河鉄道の夜』
・泉鏡花『夜叉ケ池/草迷宮/外科室』
・ジッド『狭き門』
となっています。
「あっ、この作家やあのタイトルなら知ってる!」という作品もあるでしょうか。

ライトノベルは読むけれど、純文学は垣根が高いと感じてしまう。または、純文学は好きだけれど、ライトノベルは読むのにどうも抵抗がある。こんな人がいるかもしれません。

本当はそんなジャンル分けは大して意味がなくて、いい作品はいい内容なのですが、そうは言っても新しいものに挑戦してみようというときには、それなりのきっかけが必要なときだってありますよね。『“文学少女”シリーズ』は、ライトノベルファンを純文学の世界に、純文学ファンをライトノベルの世界にいざなってくれる、橋渡し役的な存在ではないかと思います。

個人的には、この数年で教育とゲームの距離を縮めてくれた、ニンテンドーDS「脳を鍛える大人のDSトレーニング」(脳トレ)などのシリアスゲームに近いイメージを持っています。

シリアスゲームはエンターテインメント性を兼ね備えた学習ソフトで、例えば、街づくりシミュレーションゲームの「シムシティ」ほか、ゲームファンには以前から愛されてきましたが、ニンテンドーDSというハード機はシリアスゲームをうまく取り込んだことも爆発的に売れた理由の一つだろうと言われています。

ファミリーコンピュータの初代「スーパーマリオブラザーズ」が流行っていた時代に、はじめのクリボーでミスをして以来、ゲームに否定的で見向きもしなかった私の母親がDSの脳トレを日課にしているのを知ったときは「これがシリアスゲームの影響力か」と大きな衝撃を受けました。

さて、『“文学少女”シリーズ』で新しい扉を開く読者はどれくらいいるのでしょうか。

文学少女・天野遠子は文芸部部長。本作は水彩画のようなイラストも印象的

文学作品からの引用も豊富に散りばめられている。読了後は、思わず題材の文学作品を読みたくなる。作品ごとに、読者の予想をみごとに裏切る最後のどんでん返しも楽しみ

遠子は文学を愛しすぎて読んだページをことごとくおいしく食べてしまう。そんな先輩に振り回される文芸部員で主人公の井上心葉との関係は…

文学作品のページを“食べて”、味を評する