猫が語るサトルとの旅。泣いて癒されて永遠を見るリアルなファンタジー

小説・エッセイ

更新日:2013/4/4

旅猫リポート

ハード : Windows/Mac/iPhone/iPad/Android/Reader 発売元 : 文藝春秋
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:紀伊國屋書店Kinoppy
著者名:有川浩 価格:1,234円

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猫目線で猫が語る物語。猫好きのワタクシ、猫がしゃべるという設定だけでちょっと抵抗を感じるタイプだが、さすが噂のストーリーテラー有川浩、ライトにぐんぐん引きこまれていく。そして最後は泣かせに来たなとわかっても、やっぱり号泣させられてしまった。キモチイイ。

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猫のナナを拾ったサトル。ふたりは「申し分のないルームメイト」として5年間生活を共にするが、サトルののっぴきならない事情でナナを手放されなければいけなくなってしまう。読者は、かつての友達をたずねるふたりの旅を読み進めるうちに、各々の生活がありながら喜んでナナを引き取ろうとする友達とサトル自身の温かさ、そして歩んできた人生を知ることになるのだが…。

サトルはありえないくらいのいい人。なぜ恨まない。なぜそこで引く。なぜそんなに優しい。自分の運命を受け入れ、人の運命も受け入れサトってきた。そして、ナナが言うように猫も「我が身に降りかかった出来事は何もかも粛々と受け入れる」生物だ。

過酷な環境に生きる外猫だって、愛情をたっぷり注がれ恵まれた環境で生きる飼い猫だって同じように運命には逆らわず、そして逆らえない。猫に触れている人間ならわかるが、猫は恨みがましいなんてのはとんでもない誤解だ。ジタバタする人間を尻目に猫は運命を受け入れる。そんな猫のナナはそんな人間のサトルを選んだ。ふたりは永遠に幸せな旅のパートナーなのだ。

ちなみにこちらワタクシにとって初有川作品。作風は知っていたので「疲れたときに読む作家」として取っておいたのですが、的確でした。猫がかわいそうな話はイヤだなとも思ってましたが、多分、大丈夫です(笑) 運命や生死の扱い方、ふたりの名前や広がる景色などに彼岸の世界を感じつつ温かい気持ちになれます。ただし、猫好きでもそうでなくても泣いてしまう系ですから、そこだけ注意! です。


読者は各々の出会いと再会によってサトルの人生を知ることになる

「夜中に猫がほてほて踏んでいく重みって何て幸せなんだろう!」わかるぅー!

章の間に挟まれるページです

動物同士の会話もファンタジックでほのぼの

ふたりが見た「境目」と「虹」は永遠の景色でした