願えば夢はかなう!!――世界で活躍する指揮者・佐渡裕さんによるエッセイ

小説・エッセイ

更新日:2012/3/7

僕が大人になったら

ハード : PC/iPhone/iPad 発売元 : PHP研究所
ジャンル: 購入元:電子文庫パブリ
著者名:佐渡裕 価格:600円

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夢をかなえた人のストーリーを時々、無性に読みたくなってしまうのはなぜなのでしょう?

彼らの成功談を読むことで、知らず知らずのうちに、ポジティブな気持ちになるからなのか、それとも、その成功の裏にある涙ぐましい努力を知ることで、「私もがんばろう!」と明日への活力を得られるからなのか、その訳はわからないのですが、「夢をかなえる」という話には、魅力的な要素がたくさんつまっているのは確かです。

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今回、読んでみましたのは、世界の第一線で活躍する指揮者・佐渡裕さんのエッセイです。サドラーと呼ばれる熱狂的なファンを持ち、「題名のない音楽会」などのテレビ番組でもおなじみの佐渡裕さん。クラシック音楽にさほど興味のない方でも、その巨体と笑顔、エネルギッシュな姿が思い浮かぶのではないでしょうか?

「僕が大人になったら」というタイトルのこの本は、佐渡裕さんが月刊誌「CDジャーナル」に約4年間にわたり連載したエッセイをまとめたものです。連載が始まったのは、1997年、著者が36歳の時です。クラシック音楽の本場ヨーロッパを舞台に、さまざまな世界中のオーケストラに出会い、無我夢中で指揮棒を振るっていた時期だそうです。

佐渡裕さんの毎日は、超多忙。寝る間もおしんで、スコアを熟知すべく楽譜とにらめっこ、長時間にわたるオーケストラとの練習、そして極度の集中力を必要とする本番のコンサートに臨んだかと思うと、翌日には、次のコンサートに向かうため、次の街へと海外を飛び回るのです。なにせ、1年のうち8ヶ月はホテル住まい、そして、2年先までスケジュールはびっちり埋まっているというのですから、本当に休む間もありません。

本書では、そんな佐渡裕さんがヨーロッパで孤軍奮闘しながら、成功への道を一歩一歩着実に歩んでいく様子が生き生きと語られます。佐渡裕さんの子供の頃からの夢は、「ベルリン・フィルの指揮者」になること。このCDジャーナルの連載は、毎回、次のリード文から始まっていたそうです。

――僕は、小学校を卒業する時の文集にこう書いています。『大人になったらベルリン・フィルの指揮者になりたい』そして今、僕は指揮者になったけれど、まだベルリン・フィルは振っていません。つまり、この夢はまだ実現していないのです。実現するかしないかは誰にもわからないけれど、僕は今もこの夢を追い続けています。

連載の終了時には、まだこの夢はかなっていないのですが、佐渡裕さんは今年の5月にベルリン・フィルの定期公演で指揮棒を振るったのです。まさに「夢がかなった」のです。

本書では、多忙な中でも、大好きなゴルフを楽しんだり、おいしいものに目がない佐渡裕さんの人生を楽しむ姿が紹介されている点も魅力。読後は、「人生は楽しまなくちゃ!」とポジティブな気持ちになれること間違いなしです。

小学校の卒業文集に「ベルリン・フィルの指揮者になりたい」と書いた佐渡裕さん。さて、皆さんは小学生の頃、どんな夢を持っていましたか?

目次を見ると、まず、第1章のタイトル「1日24時間じゃ足りない!」の一文が飛び込んできます。ものすごく忙しいということが、本書を読んでいるとよーく分かります