ヨーロッパにいても「近くて遠い隣人」中国。ならば彼らを学びましょう

小説・エッセイ

2011/9/22

中国人、会って話せばただの人

ハード : PC/iPhone/iPad 発売元 : PHP研究所
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:電子文庫パブリ
著者名:田島英一 価格:730円

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最近、つとにスペインでも中国系の移民が増えていることを実感します。観光客の増加はもちろん、夜中の便で、明らかに「引越し」級荷物を持ってバラハス空港に降り立つ中国人家族もあとを絶ちません。

マドリード郊外には中国系企業だけで成り立つ工業地区も存在し、ヨーロッパにいても段々と世界が「ブレードランナー」化してくるような印象を受けます。

スペイン人は20%の失業率にあえいでいるというのに、移民してくる中国人たちは、すんなりと中国レストランで働いたり、巨大100円(1ユーロ)ショップを開業したり、「就労」には問題がないような印象。イギリスやフランスと違い、移民といえば南米からが主流のスペインでは、アジアからの移民の流入はある程度の緊張を持って受け入れられています。

そんな中、グッドタイミングの本だと思い購入。恐らくここでも「近くて遠い隣人」になるであろう中国の歴史を学ぶつもりはありませんでしたが、実際の彼らの習慣や心理などを興味半分覗く以上の収穫のある1冊でした。

慶応大学総合政策学部教授の著者は、フィールドワークをまず第一とする中国研究者。前半は研究者らしくデータや研究に基づく中国観を語り、後半から、実地研究中の旅行記に近いような展開で親近感アップ。写真が趣味という著者の撮った数々のスナップも、とてもよく雰囲気を伝えていて、高感度大。無神論を貫く中国中央政府ではありながら、どうやって回教やキリスト教、仏教と共存しているのかというレポートはとても興味深いものでした。

民主化が進み、成金や搾取される労働者が増える地域もあれば、面白かったのは、いまだに毛沢東思想を一貫している南街村のレポート。地元の人々に非常にベーシックな質問を投げかけてゆく著者。その答えは、生まれてこのかた資本主義の恩恵をほしいままにしている私たちには、理解しがたい状況です。入浴は週1回。肉の消費は月に1人当たり1.5kg。電化製品は統一され、将来的には給与の現金支給をなくし、貨幣経済自体を村からなくす…。

村にはレーニン、スターリン、毛沢東の銅像が並び「コミュニズムのテーマパーク」とでも言うべき一寒村の姿。中国の興隆を目の当たりにしている私たちですが、こうした寒村のような姿もまた現実の中国。さらには、チベットやミャンマーに近い部分の中国のレポートも含まれ、広大な大陸の中に混在する文化の相違も目からうろこです。

これだけリアルな中国を見せられても読後、「中国嫌い」や「中国への恐怖」がまるで湧かないのは、中国を深く愛する著者のゆえかと。お勧めです。

著者の幼少期の「差別化」に関する体験談から始まります

地元に入るからこそ、見えてくる習慣や地元意識。現地に足を運び、同じものを食べて研究しろという著者の研究姿勢に敬服

広大な国土を有する中国。異なる文化、言葉、習慣をまとめるって、無理に近いですねぇ

そうです。なんでもかんでも「中国」でひとくくりできるものではありません