先行き不透明な日本で、今必要な「ポジ出し」の思想とは?

ビジネス・社会・経済

2013/4/7

僕らはいつまで「ダメ出し社会」を続けるのか―絶望から抜け出す「ポジ出し」の思想

ハード : Windows/Mac/iPhone/iPad/Android/Reader 発売元 : 幻冬舎
ジャンル:教養・人文・歴史 購入元:紀伊國屋書店Kinoppy
著者名:荻上チキ 価格:800円

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若手論客の筆頭としてテレビ出演なども多い荻上チキさん。メディア出演のときの活躍を見てもそうですが、本書を読んで感じたのは、彼の卓越した「まとめ力」です。

とにかく、社会の様々な問題や概念を整理し、まとめて名付けて提示し、読者に理解させる、という作業がうまいのです。そのため、扱っている問題は政治や経済の複雑なテーマが多いのですが、最後まで眉間にしわを寄せず、流れるように読むことができるのがこの本の特徴です。

たとえば、現在の日本が陥っている問題を前進させようと考えるときに、彼は「功利的な包摂」と「倫理的な包摂」の2枚のレンズを通して考えろ、と言います。「倫理的な包摂」とは、これは倫理的に考えて、社会全体で取り組んでいくべきであろう、という考え方に基づく包摂。

一方で「功利的な包摂」とは、その問題を包摂することが、あなたにとっても社会にとっても利益になるから、皆で取り組みましょう! という考え方で、政策は、これらの2つのレンズを通して観察することが必要だと解きます。

ほかにも、たとえば、昨今話題になった生活保護の問題についても言及しています。一般的に、生活保護制度は経済的貧困層を救済するものというイメージがあるため、「不当にお金を得ているのではないか」など、不正受給に対する「ダメ出し」の方向に傾きがちですが、実際には失業者を救うための政策というよりは、障害者福祉や高齢政策が失敗してきたからこそ、生活保護にしわ寄せが来ているという側面が大きいと説明しています。

筆者は、このように社会問題をひとつの事象とそれに対する「ダメ出し」をするのでなく、“構造的な問題”に目を向けることが必要だといいます。「ポジ出し」の姿勢としては、後に筆者が言うように「どういう制度であれば受給者が生活保護から卒業しやすくなるのか?」というような視点から、自らの考えや提案を出していくことを指すのでしょう。

政治経済に関する政策や、社会問題を語るときには、どうしても問題点のみを単焦点的に捉え、その問題の指摘や批判をすることに集中しがち。しかし、大事なのはその物事がどうしてそのような問題になってしまったのかを多角的に、構造的に捉える視点だということをこの本は教えてくれます。その視点を持つためには、たくさんの本を読んだり、知見を増やしたり、多くの考え方に触れることが必要なんだと思います。

今日本の社会で起きている問題について、どうして今私たちがここにいるのか、今どのような議論をしていて何が間違っているのか、それを直すにはどのような視点や考え方を持てばいいのか? 本書は、そんな視点の持ち方や考え方のトレーニングに最適です。


これからの社会には、あなた(読者)の「ポジ出し」が不可欠とのこと

社会保障の設計を行うときに必要な「包摂」の概念についての説明もあります

参加するひとりひとりに時間をかけたコミットメントを求めるのではなく、みんなの数秒を蓄積していく方法を「スマート・デモクラシー」と名付けています

日本の多くの社会システムは、「若い健常者で異性愛者で、主に男性」という属性に最適化されて設計されているという指摘は、腑に落ちるものが