息子を救いに旅出つ勇者のお供は、半人型の長靴を履いた子猫!

更新日:2013/4/7

猫mix幻奇譚とらじ (1)

ハード : PC/iPhone/iPad/Android 発売元 : 小学館
ジャンル:コミック 購入元:eBookJapan
著者名:田村由美 価格:432円

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作者の田村由美さんは『BASARA』で第38回小学館漫画賞、『7SEEDS』で第52回小学館漫画賞少女向け部門を受賞した実力者。受賞作品はSF大河とSFサバイバルで、骨の太いストーリーに魅了された人はきっと大勢いるはず。

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今作の『猫mix幻奇譚とらじ』は、作品雰囲気をガラリと変えた魔法あり喋る動物ありのファンタジーです。表紙の可愛さにほのぼの作品かな? と手をとれば、きっと嬉しい誤算をします。そこここに漂う田村節から、今後のストーリーの膨らみを予感させられ、続きが楽しみになること間違いなし!

舞台は、ねずみが知能と力を持ち、人間と戦い続けて2000年が経った世界。ねずみの中でも「魔法のねずみ」は、動物をmixと呼ばれる存在に変える力を持っています。mixとは、人間の言葉を理解し二足歩行をする半人型の、元は動物だった者たちを指します。

パイ・ヤンは国を守るためにねずみと戦い続けてきた勇者。妻子ともまともに会えず、ずっと戦い続けてきた彼は、戦功の褒美に3年ぶりに故郷へ帰れることに。しかし待っていたのは、ねずみに襲われ荒れた故郷。家に帰ると、なんと息子は「魔法のねずみ」に攫われてしまっていたのです。彼はすぐさま息子を救うための旅に出ます。お供に、息子の飼い猫だった猫mixのとらじを連れて。とらじの知る魔法のねずみの臭いだけが唯一の手がかりなのですが、とらじは子猫のため様々なことを知りません。そのためパイ・ヤンは道中振り回されっぱなし。こんな調子で、果たして魔法のねずみを探せるのか……という内容です。

私がおもしろいと思ったのは世界観で、特に本作でのねずみの扱い方が気になります。村を襲い何もかも食べてしまうねずみの中でも、一定の地位を持つ者だと人間そっくりに化けることができます。そんなねずみに対してある猫mixが言いました、「あんたらは人間ににゃりたいんだにゃ」と。人間の作った作物を、家を、果ては人間自身を食うというねずみ達の行為に、ただ敵対しているからというだけではなく、何か愛憎のようなものを感じておもしろい。

そもそもどうしてねずみがこんなに力を持つようになり、人間とあらそうようになったのか、なぜねずみの天敵になりえるmixを作るのか。謎は尽きず、いつ回収されるのかが大変楽しみな、続きが気になって仕方ない作品です。


息子を探してある村に着き、旅の疲れを癒すパイ・ヤン(中央)ととらじ(左下)。リラックスするパイ・ヤンとは対照的に、とらじはある一点をじぃっと見つめております。その視線の先にいるのは……?

ねずみを狩る時のとらじは普段とのギャップが。目を光らせて、獲物を頭からぱくりとひとのみしてしまいます。とらじ怖い!

人間のルールが分からず盗み食いをしてしまったとらじを助ける伯爵(右上の犬mix)が登場。mixは迫害されることが多い世界ですが、伯爵はその人格者ぶりから町中の人たちから自然と「伯爵」と呼ばれるほど。優しくとらじを諭す伯爵がかっこいい
(C)田村由美/小学館