美女に姿を変え、現世に舞い戻った猛烈サラリーマン。期限はたったの7日間!

小説・エッセイ

更新日:2012/3/7

椿山課長の七日間

ハード : PC/iPhone/iPad 発売元 : 朝日新聞出版
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:電子文庫パブリ
著者名:浅田次郎 価格:540円

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猛烈サラリーマンの椿山和昭(46才)は連日の無理と過労がたたって、取引先業者との飲み会の最中に倒れ、そのまま帰らぬ人に。残したのはひと回りも違う美しい妻とかわいい息子、そして彼が文字通り“命をかけてきた”仕事。

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高卒のたたき上げで本店の婦人服課長というポジションまで上り詰め、大卒の上司や部下にもまれながらやってきたのだから仕事への思い入れも人一倍なはず。その上今日は、彼が勤めるデパートの「初夏のグランド・バザール」初日なのです。

そんな椿山が今いる場所は、いわば、天国の一歩手前。ここは、現世の罪を反省し、天国へ行く許可をもらう場。反省といっても、かなりお手軽なシステムが組まれていて、誰でも簡単に天国に行けるはずなのですが、椿山はここで駄々をこねてしまいます。「やり残したことがある」と。特例で現世に舞い戻った彼に残された時間はわずか7日間。その間に心残りがないように、全てを終わらせなくてはならないというから大忙しです。

姿形をかえて、現世に舞い戻った椿山。ナイスボディの美女・和山椿となった椿山和昭は、自分の容姿に戸惑いつつも、“懐かし”の我が家へと急ぎ、愛する妻子と再会を果たすのですが…。自らの素性を明かすことは禁じられている椿山の行く先々で彼が遭遇するのは、思いもかえない事実なのです。

物語は笑いあり、涙ありで次から次へと展開していきます。自身が知らない家族の秘密に驚愕しながらも、生前関わった大切な人々への愛情を注ぎ続ける椿山の姿にホロリ。

椿山と同様、期限付きで現世に舞い戻ったやくざの組長と小学生との絡みもあって、長編ながらまったく飽きさせません。もとは朝日新聞の連載小説で、映画化、テレビ化もされた作品。幅広い層の読者にお勧めです。

主人公の椿山和昭は、ふと気がつくと、純白の花を咲かせる沙羅の並木道を歩いていました。そう、彼はもはや、現世にはいないのです

美女になった自分の姿に戸惑いつつも、美しい自分の体のあちこちに触れてみる主人公。メンタリティーはおじさんのままなのです。笑えます