東京での失恋を引きずって故郷の役場にUターン就職、そしてまさかの奇妙な三角関係

公開日:2013/4/10

雨無村役場産業課兼観光係(1)

ハード : PC/iPhone/Android 発売元 : 小学館
ジャンル:コミック 購入元:BookLive!
著者名:岩本ナオ 価格:432円

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農村の過疎化が進む中、農村では田舎暮らしの短期プログラムを実施したり、新しい定住者には破格の条件を提示したりするなどで、都市部から若者を募っています。そうした努力のかいあり、農業に興味を示したり田舎暮らしに憧れを抱いたりする若者が増えるとともに、コミックや小説などでも、都市部に暮らす主人公が田舎で快適ライフを…といった作品が人気を集めています。

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本作も同様、都会に暮らしていた主人公が大学を卒業して故郷「雨無村」に帰ってくる、というもの。そして、タイトルのとおり村役場に就職し、観光係を務めます。

就職難といわれる時代にあって、住み慣れた都会を離れて就職せざるを得ない主人公の境遇に哀れみをかけてしまいそうですが、主人公が雨無村で就職するのは「生まれ故郷の人々のために働きたい」というもの(立派!)。あと、彼女にフラれたというのもあって…(そうですか…)。

そんな境遇なので、Uターン就職がバンバンザイなのかと思いきや、地元の駅に立ち、何もない景色を目の当たりにすると、やはりちょっと後悔して(東京で就職したほうがよかったかな…)と思ったりする主人公の正直さに、かえって好感を持ってしまったりします。

さて、そんな本作のテーマは「観光係として村を活性化させる」だけではありません。主人公と、子どもの頃から知っているかなりの“ぽっちゃり系”で言葉づかいが荒いメグ、そしてイケメンの澄緒(すみお)。村の高校生以上の若者はこの3人しかおらず、「仲良くしようね」と約束するも、そのうち主人公はメグに好意を持ち、メグは澄緒に気があり、澄緒は主人公が好きだという、奇妙な三角関係が形成されます。

「え!? まさかのBLですか!」と奇抜すぎる展開に一瞬とまどったものの、純粋に純愛系であります(とりあえず1巻は)。あとがきまで読むと、編集からのオーダーで「BLっぽい風味も」とのことで、納得。役場での仕事を通じて人間的に成長していく主人公の姿と、三角関係の構図が微妙にゆがんでいくにつれて変化していく3人の姿が絡み合い、癒し系なのにスリルがあるという、非常にユニークな作品です。

ちなみに、作者は「自分が育った土地を舞台にした作品しか描けない」と公言しており、本作でも地元・岡山県灘崎町の土地や村場を綿密に取材うえで描かれているので、風景はじめ、作品のすべてがやたらとリアル。マンガを読んだ後に、ぜひ一度、灘崎町を訪れてみたいと思わせてくれます。


なにもない地元。いや、田んぼや畑はある。都会に未練は正直あれど…

村の高校生以上の若者は、主人公(下のコマ左)とメグ(中)と澄緒(右)しかいないという状況。仲良くしていけるものなら、それにこしたことはないが…

役場に就任。商工観光係を任される。村の名物って何だ?

山の斜面にある大きな桜の木。観光の起爆剤になるか?