もう見ることができない、震災前の東北の美しい景色に胸が熱くなる…

公開日:2013/4/14

美しい東北I 昭和の三陸――八戸から牡鹿半島

ハード : PC/iPhone/Android 発売元 : PHP研究所
ジャンル: 購入元:BookLive!
著者名:安田就視 価格:450円

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東日本大震災から、2年。人々の心も被害を受けた地域も、いまだその傷は癒えていません。

忙しい日々の生活の中でも折にふれて、さまざまな復興支援活動を目にするうち、「一度、自分も被災地の現状を見ておかなければ」と思いつつ、それがまだかなっていないという方。

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また震災後、「何か少しでも役に立てないものか」とボランティアに参加するために東北へ行き、「そういえば、これまで自分は東北の沿岸部に一度も来たことがなかった」と、改めてはっとされた方。

この写真集は、そんなすべての人々にご覧いただきたい、かつての東北の姿が切り取られた貴重な記録です。東北沿岸部の美しい夕景、さばの水揚げでにぎわう宮古港や、のどかな三陸海岸を走る列車の姿、新日鉄工場の煙突が勢いよく吐き出す白い煙が目にまぶしい釜石駅周辺など、昭和の素朴な東北が活写されています。

1枚、1枚、写真をタップしていくと、震災で痛ましい被害を受けた沿岸部地域が、ほぼ網羅されていることに気づきます。ふと「これはいつ、誰が、なんのために撮った写真なのだろう」ということが気になりますが、その答えは撮影者・安田就視(なるみ)さんの冒頭のコメントと巻末プロフィールにありました。

安田さんは福島出身の奥さまと結婚。その縁から東北地方へ足を運ぶようになり、いつしか雄大な自然を撮り続けることがライフワークになったのだとか。消え行く昭和の鉄道やSL、私鉄全線をくまなく撮影する旅に出たこともあったそうで、北は八戸市から大船渡、陸前高田、気仙沼、石巻、牡鹿半島まで、昭和の古きよき三陸地方の風景がファインダーに収められています。

ちなみに私自身も、ボランティアを機に、沿岸部を訪れたひとりです。
大船渡や釜石、南相馬、石巻などで炊き出しや瓦礫撤去、あるいは仮設住宅訪問をしながら、もとあった景色がまったく想像できない光景に呆然とすることもたびたびでした。

もう見ることができない、美しい自然に囲まれていた集落や町並み。そしてそこで確かに営まれていた、人々の生活の証。

震災から3年目に入り、支援の形はさまざまに変化しつつあります。復興の活力につながるような作品として企画・編纂されたこの写真集は、東北を忘れないために、手元においておきたい1冊です。


鉄の町・釜石の駅周辺は、力強い印象

日和山から見下ろした、冴えわたるような石巻の朝

風光明媚な海辺の景色が臨めた、気仙沼線

『美しい東北Ⅱ 思い出の風景—女川から福島まで』では、女川から石巻港、塩竈、南相馬市、いわき市まで昭和後半から平成初頭の海岸地方の64の風景が収められています
(C)安田就視/朝日メディアインターナショナル株式会社