因果応報、輪廻転生を描く、でもちょっとグロなコミック

公開日:2013/4/20

不成仏霊童女

ハード : PC/iPhone/iPad/WindowsPhone/Android 発売元 : ぶんか社
ジャンル:コミック 購入元:eBookJapan
著者名:花輪和一 価格:600円

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死んだらあの世があるのかないのか。それはやっぱり地獄と天国があって、私などはさしずめ地獄で書けない原稿を書けと鬼に折檻される締め切り地獄で死ぬほど苦悶する締め切り地獄に落とされるに違いない。もっとも締め切り地獄にはすでにどん底まで落ちている毎日なのだけれど。

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死んであの世があるかどうかと悩むのはキリスト教の話である。仏教には実は地獄というのがない。

ないといえば仏教には幽霊というものもないのであって、地獄と幽霊、どちらも仏典のどこにも出てこない。成仏という言葉があるように仏となるか、輪廻転生しておぞましい生をもういっぺんというか、永劫に生まれ変わり続けるか、そのどちらかなんである。地獄や幽霊は民間信仰の概念なのである。

ただ、血の池とか針の山を説教のうちに語れば、罪業への報いがヒジョーに分かりやすい。現世での悪しき欲望をよく抑えるために考え出された効果的な方便だろう。

花輪和一はデビューの頃、残虐絵や過激なエロ表現で、「耽美派」「猟奇派」と呼ばれたが、ある時期から作風が変わった。中世を舞台に因果応報を描く、それでもやっぱりグロテスク風味だけは健在な、人間の「業」をテーマにした作家になったのだ。

中世といっても魔法使いやドラゴンは現れない。安土桃山時代と思われる庶民たちの話である。

『不成仏霊童女』はひとりの少女が三途の川を渡りそこね、どこへも帰ることができない不成仏霊となって戻ってくるところから始まる。ここで地獄や霊がちゃんと出てきているが、その理由についてはあとで書く。

彼女はこの世でさまよいながらいろいろな人と出会い、多くの悪行を目撃する。

見るべきは、彼女がいわれのない悪意に虐げられる人々に同情を寄せるとともに、悪に染まり過酷な罰を受ける人にも優しい気持ちを示すことだ。早く死んで生まれ変わってやり直すように祈るのだ。

正しき人にも悪しき人にも慈愛を示す少女の姿は私たちが見ればひどく奇妙ですらある。しかしそれが花輪和一の偽らざる、仏教から教えられた思想なのである。

花輪は、信じられないような虐待的な幼少期を体験したと告白している。そこからどう逃れるか、枷をはめられたトラウマの中からどう抜け出すか、それは彼の表現に影を投げかけざるを得ないのだろう。『不成仏霊少女』も例外ではない。彼にとっては現世こそが「地獄」であったに違いない。


少女は三途の川を渡ることとができない

頭と尻に木の枝を刺し悟りを願う男に出会う

いじめられっ子は祈祷しに頼みいじめっ子を殺してもらう

子供への執念に縛られた母は下半身が虫のように変化する
(C)花輪和一/ぶんか社