「当たり前のもののかけがえのなさ」を考えさせる、新感覚寓話

小説・エッセイ

2013/4/28

世界から猫が消えたなら

ハード : Windows/Mac/iPhone/iPad/Android/Reader 発売元 : マガジンハウス
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:紀伊國屋書店Kinoppy
著者名:川村元気 価格:1,512円

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突如、余命1週間を宣告された主人公の前に現れたのは、自分と顔はそっくりの派手なアロハ姿の「悪魔」。彼は1日の延命と引き換えに、世界から何かひとつを消すという「契約」をもちかける。悩みながらも、契約に同意した主人公の前からは、最初に「電話」が、次に「映画」「時計」が消え…。

「あるのが当たり前だったことが、なくなってはじめてわかること」について、読み心地はライトながら、何かしら考えるきっかけをあたえてくれるような本。「人生哲学系エンタテインメント」というが、たしかに「物語の世界にはいりこんで楽しむ」という通常の読み方にとどまらず、「物語をきっかけに同時進行で自分に思考をめぐらせる」といった、ちょっとした能動的感覚が味わえる。

ただ、考えることが中心になるためか、物語の設定や展開のちょっとできすぎなところも(ほぼ主人公のモノローグというのもあるが、元恋人や親友との関わりはあってもかなり孤独だし、多少ジタバタしても、主人公は基本的にものわかりがよすぎるし冷静だし。おまけに世界からすごく大事なものがなくなったはずなのに、思考的には仔細検討されても、実社会への影響はまるでないほどの静けさだし…)。もちろんリアリティとは別次元の「新感覚寓話」として楽しむには問題ないわけで、そうした物語世界だからこそ、「当たり前のもののかけがえのなさ」をしみじみ実感するような「心のマッサージ効果」を高く得られたりもするわけだ。

それにしても、主人公が実感したような「日々のいとしさ」は、くれぐれも生きている最中にこそ大事にしておきたいもの。死の直前じゃもったいなさすぎる。でも、そういうシチューエーションだからこそでもあるわけで…あー精進精進。


目次より

冒頭より(1/3)

冒頭より(2/3)

冒頭より(3/3)