電気のない「夜」に高校生が見たものとは…? 恐怖の一夜が始まる

小説・エッセイ

公開日:2013/5/4

夜までに帰宅

ハード : Windows/Mac/iPhone/iPad/Android/Reader 発売元 : KADOKAWA
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:紀伊國屋書店Kinoppy
著者名:二宮敦人 価格:540円

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もしかしたらちょっと先の未来では、こんな日本になっているかもしれない―。節電で夜間はすべての電気が通らない。電気がないので当然電車も走らず信号も消える。“残業”などという言葉は死語で、警察や医療機関も夜間は動いてくれない。キケンなので外出禁止。よくよく考えれば、そんなシチュエーションは難しいかもしれない。でも、もしかしたら…と、思う。そんな世界。

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「夜」制度が導入されてから19年。高校生のアキラ達は夜間に家を出たことすらない。普通に夜遊びしていた親世代は何故か異常ともいえるほど「夜」を警戒し、子供達に厳しく「夜」までに帰ってくるように言い付ける。ある日、アキラを含めた同級生の男女4人は、ちょっとした冒険心でそんな未知の「夜」に繰り出すことにした。

舞台は吉祥寺。私は吉祥寺の街に詳しくないけれど、きっと細部まで書かれている通りの場所なんじゃないかと思う。リアリティーのある風景描写なので、そんな場所で「夜」である、ということが現実味を帯びて不気味に感じます。

“「夜」に外出すると、闇にのまれる”なんて噂があるものの、都市伝説のようなもので信憑性がない。最初は肝試しのようなドキドキ感で楽しげでした。だけど、そんな悠長なことを言っていられるのは前半だけ。

噂話の正体が明らかになってからは、どうなるのか不安でページを止めることができなく、一気に読了。 思った以上にホラーでした。舞台の現実味に加え、主人公のアキラもアニメやドラマのように“こういうシーンはこうするべきでしょう”みたいなものとはちょっと違い、様々に感情が入り乱れる一人の人間として描かれていて生々しい。 4人以外の登場人物はさらに、信じがたい趣味を持っていたり特異な人物に思えながらも、自分の周りにも居そうな、そんな生々しさを感じるのです。スリリングなホラー好きにオススメ。

エピローグ…、薄々勘づいていたけど、ここまでだとは……怖い!!


それは私たちの思っている“夜遊び”とは違う

「夜」の前には必ず放送が流れる

いかに電気が貴重かがわかる

不気味に響くものはいったい何?

淡い恋心の結末は―