悦楽的でポップな描写が大変おもしろい純コミック

2013/5/7

夢の贈物

ハード : PC/iPhone/iPad/Android 発売元 : グループ・ゼロ
ジャンル:コミック 購入元:電子貸本Renta!
著者名:ひさうちみちお 価格:105円

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ひさうちみちおの絵柄はポップだ。軽くて、まるで人物が浮いているように見える。ポップというのは時間の流れに弱く、古いとか時代に合わないとか、すぐダサイものに変わってしまう。けれどひさうちのマンガはつねにポップにあり続ける。時代の波の上を落ちることなくつねに滑走してみせるサーファーのようだ。

『夢の贈物』には10の短編が収められている。

それを通読してみると、彼にはとくに書きたいことなんかないようにさえ思える。何について書いたのかあんまりよく分からない。なにかについて書いたのでなく、単に「絵」が書きたいだけみたいな気がするのである。そうしてその「絵」は大変苦労して書いているに違いない。線の一本一本がこれ以上ないくらい精密なストリームをなぞってコマを成立させている。漱石の『夢十夜』の中で運慶が仏像は彫っているのではない、木に埋まっているのを取り出すだけだといっていたが、ひさうちのコミックもそんな感じだ。

気品があると、ひさうちのマンガについては、そうもいえる。いじめられっ子の山本くんがニキビがほしいと考え、頬にプチプチを貼って水を注入、女子生徒の前でつぶしてみて気味悪がられる作品、「山本くんが、なぜ登校拒否をしてニキビをつぶすようになったか 転落」も、生理的な不快感を起こさせながらも、なお気品があるのは不思議のひとことにつきる。

逆にいうと、彼の作品には「内容」がないということでもあるけれど、ほとんど内容がなくても、「絵」を楽しんでいればそれで快感なので、そんなことどうでもいいやって気がしてくる。

これを総合していうと、文学を徹底的に昇華した純文学という言葉があるように、純コミックとしかいいようがない。

軽さの中を戯れて気がついたら1編を読み終わっている。そう言う読み方が正しいのではないか。純文学がおもしろいかどうかは知らないけれど、少なくともひさうちみちおのコミックは大変おもしろい。


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