「幸福」の定義が変わった? 現代の「幸せ」とは何かを考える1冊!

更新日:2013/5/8

続・悩む力

ハード : Windows/Mac/iPhone/iPad/Android/Reader 発売元 : 集英社
ジャンル:教養・人文・歴史 購入元:紀伊國屋書店Kinoppy
著者名:姜尚中 価格:648円

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東日本大震災以降、多くの人が自分の生きる意味を考えました。その結果、結婚したり、職を変えて家族と一緒にいることができる時間を増やした人がいたり、より社会貢献性の高い仕事に就いた方もいます。急速に社会の向かう方向が変わりました。特に、若い世代はそれを強く感じているようで、幸せとは何かを考えるようになりました。

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本書では震災により、漱石やウエーバーが100年以上前に悩み苦しんだ「幸福論」が近代の中でより大衆化され、日常化され、これまでのような中流意識の「幸福」を感じることができる人は少なくなったと指摘しています。仕事が見つかりにくくなり、年金が期待できない。自由な社会になればなるほど、そうでなかった時代に比べて人間は自意識過剰になりホンモノ探しを始めます。

しかし、グローバル資本主義の中では、人間は代替可能入れ替え可能な商品になっていく側面があり、自分らしくありたいというホンモノさがし、自分さがしができない環境になって大きなギャップが生まれます。これでは幸福感を感じることが難しいし、実際そのギャップに耐えることができず心を病む人が増えています。

漱石は高等(お金持ち)遊民といって、過酷な現実の中で自転車を漕ぐことをやめてしまった人たちを描いていますが、現代でも高等であるないにかかわらず、自転車を漕ぐことをやめてしまう人は少なくありません。その対処法として、作者は今までの価値観を大きく変えて、二度目の人生を生きなおす“二度生まれ”をして、“一度生まれ”と違った生き方、考え方をする必要があると説いています。

大企業を辞めて、NPOやNGO、起業といった生き方を選び、本書でいう“二度生まれ”の人生を選択する人が筆者の周辺では増えています。「成長」ではなく「社会貢献」をキーワードにしている方がほとんどです。また、企業も単に利益を生むだけでなく、利益には質があり、社会と向きあって貢献してこその利益という価値観へ向いてきています。漱石が100年前に指摘した「幸福」のありかたについて、考えるときがきたようです。


長く続いた総中流の幸せは終わりに近づいています

漱石の予測は見事に今の時代の到来を当てていました!?

成長することでは幸せはつかめない!?

現代は「液状化する近代」(ジグムント・バウマン)を生きている!