『北斗の拳』原作者自らが綴った自伝風実録ノベル!

小説・エッセイ

更新日:2013/5/9

原作屋稼業 お前はもう死んでいる?

ハード : PC/iPhone/Android 発売元 : 講談社
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:BookLive!
著者名:武論尊 価格:1,080円

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武論尊といえば、『北斗の拳』や『ドーベルマン刑事』の原作者。私など子供のころジャンプの原作はほとんどこの方が書いてるのかと思っていた。しかも「史村翔」名義でも『ファントム無頼』や『Dr.クマひげ』や『右向け左!』をはじめとする様々な名作を残した方だ。

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『原作屋稼業』というタイトルと表紙イラストが原哲夫ということから、うわあ、ケンシロウやレイ(私はラオウ派じゃなかったので)の誕生の秘密がわかるのね! と楽しみに読み始めたのだが…。

本作は、性格はいいけどモテ要素に欠け彼女にもふられたサラリーマンが会社を辞めて売れっ子原作者ブー先生に弟子入り志願するという、ライトなフィクション。そう、残念なことにフィクションなのだ。「俺は自伝を書くほど立派な人間じゃないし、こんなオッサンの自分語りなんかみんなには迷惑なだけだろう。」なんてまえがきに書かれてますが、先生、お茶を濁しましたね。

『北斗の拳』がどのように始まったのか、背景設定は『マッドマックス』以外にもポル・ポト政権崩壊直後のカンボジアへの旅行が影響していたことなど、面白い話がまえがき63ページにたっぷり詰まっているだけに、残念すぎる。フィクション部分自体はつまらなくはないし、「キャラクターやエピソードは実在する人物、団体等とはかなり関係が」あるらしい。

まあ実際、週刊誌編集部の人々を見ていればこのくらい無茶な人間がいるのは想定内(正直『バクマン。』に登場する編集者たちの人間的な出来の良さを疑っていたくらいだ)。だからこそ、リアルなノンフィクションを読みたかったなあ! それにこういう破天荒さは一般的なカタい会社ではあり得ない話らしいから、多くの読者さんから軽いフィクションとして読まれちゃうのでは。作品のクオリティは低くはないし、ブー先生の一貫した人生哲学がところどころに盛り込まれ、内容も悪くない。だからこそ、いろいろ残念な本であるのです。


1982年のカンボジア旅行で見た光景について。この体験から「人間の持つ欲望や狂気、残酷さなどの」テーマが心から離れなくなったという

ブー先生の人生哲学。この前頁に「運の95%はこの世に生きてるってこと」という名台詞が

原作の内容をほとんど変えられた原稿を見てショックを受けた弟子に対してのアドバイス。人生哲学はこのほかにも
(C)武論尊/講談社