今だから語り継ぎたい、残しておきたい、この想い。マンガでみる「3.11」の記憶

コミック

2013/5/11

ストーリー311

ハード : Windows/Mac/iPhone/iPad/Android/Reader 発売元 : 講談社
ジャンル:コミック 購入元:紀伊國屋書店Kinoppy
著者名: 価格:735円

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マンガという手段は、時には映像よりも、読むものに大事な物語を届けることができる。なぜなら映像は、その時その場所で記録していなければ、起こったことを後から再生はできないからだ。それを可能にしたのが、漫画家のひうらさとるさんを中心に立ち上がった、この『ストーリー311』プロジェクトだ。

このプロジェクトは、被災地で起きた出来事と人々が抱える様々なストーリーを、漫画に書き残せないだろうか? という想いから生まれた。参加した漫画家さん達は、ひうらさとる、末次由紀、さちみりほ、上田倫子、東村アキコ、岡本慶子、ななじ眺、樋口橘、うめ、新條まゆ、おかざき真里(敬称略)…と、漫画好きならびっくりするような豪華な面々である。

この本の中には、まさに地震が起こってから津波が来るまでの時間、復興と言われる3.11後の長い時間の間に生まれた、異なった被災地の異なった状況の人が抱える様々なエピソードが描かれている。それは、テレビやyoutubeで観た映像からは知ることの出来なかった等身大の震災だった。

逃げていく車を通すために、電線を頭の上にかかげて通してくれた人がいたこと。走って逃げているといつの間にか津波が引き波になっていて、自分の後ろを走る人がいなくなっていたこと。避難所で毎日冷たいお茶やおにぎりを食べていた子どもたちがジュースやチョコレートを欲しがってぐずっていたという現実。そしてそれは、子どもを抱える夫婦にとっては贅沢なことでもなんでもなくて、生きるためにはただ「食料」が必要なのではなく、あの時の精神を支えるための糧が必要だということ。

「“伝える”っていうのはすごく、すごく覚悟のいることなんですよ」…
プロローグで描かれていた、現地で語り部の活動をされている方が漏らしたことばがとても心に残る。自分の無力さ、何かしたいと思うことはおこがましいことなんだろうか。当時者の気持ちを本当にちゃんと伝えられているだろうか、自分の伝え方が誰かを傷つけたりしていないだろうか…とくに、福島の取材を通して描かれたストーリーでは、原発事故や放射能を巡って迷い悩む人たちと、それを「静かで、重く、デリケートなもの」(ななじ眺)だと感じた書き手の気持ちがそのまま伝わってくる。被災地の人たちの勇気ある告白や震災の惨状に触れて、ショックを受けたり、感動したり、励まされたり、悩んだり…

すべての短編ストーリーの最後には、マンガ家さんたちがどのようにして現地で取材を行ったのか、何を感じ、何を考えたのかが、ページいっぱいに書かれていた。その溢れんばかりの思いと悩みと葛藤こそが、この本を読んだ人に伝わる大きなメッセージだと思う。

「辛すぎる記憶はなるべく早く記憶から消えるようなシステムがある」(上田倫子)けれど、地震も津波も原発問題も、この国に住むすべての人にとって人ごとではない。『ストーリー311』は、あのときの震災がいまだ完結した物語なんかじゃないことを教えてくれた。震災から2年と少し経った今だからこそ、もう一度震災に向き合ってみる、いいきっかけになるのではないかと思う。


涙なしには読めないシーンもたくさんありました

プロローグで語り部の方が語った言葉は、読み手の私にも強く心に響きました

ひうらさとるさんの描く、福島の小学校で先生をする』女性の物語。ひとりの女性としての「決断」に、心を動かされる

迷い、悩みながらこのプロジェクトに向き合った漫画家さんたちの生の声が伝わってきます