懐かしの「ムーミンの冒険」が電子書籍でよみがえる!

小説・エッセイ

公開日:2013/5/20

新装版 ムーミン谷の冬

ハード : PC/iPhone/Android 発売元 : 講談社
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:BookLive!
著者名:トーベ・ヤンソン 価格:432円

※最新の価格はストアでご確認ください。

私はある時期までキヤノンのカメラが好きだった。いま持っている中で一番気に入っているのは、A-1というオートフォーカス以前の、鉄を削り出したような無骨な一機で、もちろん手動リワインド。撮るたびに親指でシャカシャカやるのが快感なのである。

その後オートフォーカスが登場し、ニコンも買ってみたけれど、結果的にはEOSの方が手に残った。やがてデジタルがムクムクと世に台頭し覇権を競うに従い、ややカメラから離れたのは、キヤノンを含めたカメラ群のシェイプが「丸っこく」なってきたからだ。もうなんか、可愛らしく作ってるつもりなのだろうが、全然ふやけているのだ、その線が。ヌルッとしてる。EOSなんかムクムクの溶けかかった雪だるまみたいとしかいいようがない。

それで、デジタルカメラはパナソニックのG3というのを、型落ちで買った。価格が問題だったのでなく、形が「私の知っているカメラ」のそれに近く、液晶とともにファインダーもついているのがこれだったのである。

でも「丸っこい」のがすべて柔というわけではない。

その証拠にムーミンの丸っこさはこよなく可憐だ。本書に多数はさまれている挿絵を一目見れば、たちまち虜になるだろう。ムーミンは可愛い。

ムーミンのかわいさはイラストばかりではない。ムーミンシリーズのすべてに渡って、ムーミンの行動や考えは、こんな子供がいたらどんなに切なかろうと思うくらい可愛い。

ムーミンはフィンランドの作家トーベ・ヤンソンが生み出した童話のシリーズだ。フィンランドといったら雪と氷の国のイメージが強いのに、実は冬を舞台に描かれているのは本書のみである。

それは、冬にはムーミンの国の住人はみな冬眠してしまうという設定にもよるのだろうが、もっといえば雪に閉ざされた日常の人たちの暖かな陽光へのあこがれという側面もあるに違いない。

ムーミン家のすべての人が冬眠に入っているのに、ムーミン一人が目覚めてしまった、そういうシチュエーションからこの本は始まる。淋しい。ムーミンは淋しいのだ。

しかたがないから外へ出て行くと、世界は雪で覆われている。いつもの物語なら、ムーミンを優しく支えていた家族のてのひらがあったのに、ムーミンはたったひとり雪の中を歩いて行くのだ。

雪の中でムーミンはこれまた冬眠から覚めてきたいじめっ子のミーや、シニカルな考え方をするオシャマさんたち、次々に仲間たちと出会うことで、例のごとくてんやわんやのエピソードを繰り広げてくれる。

次第に雪がやみ、海の氷が溶け出すと、ムーミンは海の向こうで吹き荒れる遠い吹雪の風景を見る。

ムーミンの淋しさには、ほんの芽ばかりのぞかせた少年の自我の姿があるし、冬にさよならし冬から旅立つリリシズムがたっぷりと含まれている。


ムーミン谷は雪に包まれた

ムーミンはひとり目覚めてしまう

丸っこいのが可愛い

ムーミンは生まれて初めて雪をみる
(C)トーベ・ヤンソン/講談社