シンプルな説得力。研ぎすまされた言葉の数々
公開日:2013/5/26
シンプルなのに奥深い羽生氏の表現は、まさに将棋のようです。将棋をする方には最高の奥義書になるのではないでしょうか。表紙の氏のまなざしの鋭さ、若さ、真摯さにも惹かれて購入しましたが、将棋をやらないものとしては、全くの人生訓の本として読んでしまった1冊。
70年生まれの彼は85年には史上3人目の中学生棋士に。96年には7つのタイトルを総制覇したことでも有名です。その勝ち続ける将棋の奥にはどんな思考が隠されているのか。普段彼の頭脳はどんな風に何を考えているのか。将棋でなくとも、ひとつのことに秀でた人物には必ずその生き方に哲学があるもの。40代の若さなのにその言葉の重みは尋常ではありません。
将棋という宇宙の中で熟考された言葉が文字になるとき、その簡易さも注目に値します。難しいことを難しく語るのは実は簡単なこと。難しい世界を一般人にもわかるような易しさ、そして優しさで表現している文体にもすっかり魅せられました。
「プロの棋士になって1500局を超えましたが、これぐらいの局数ではまだまだ全然わかりません」「心で考えるという概念がとても好きです」「先天的な頭脳の冴えというようなことよりも継続力が大事な要素になってくる」「ひとつのことをやり続ければ能力は衰えない」などなど。氏の言葉は将棋の世界を超えてあらゆる仕事に、あらゆる人生の局面に有効なのではないでしょうか。
あっという間に読めてしまう1冊ですが、奥深い。携帯に保存したいくつかのキーワードのページは、ダメになりそうなとき何度も見返すことになりそうで、一石二鳥な本です。
どのプロもそうですが、極める人ほどこの言葉は共通します
勝てないときも、ある。客観視できることが大切
これもよく言われるけれど、羽生氏の言葉になると説得力が100%アップする切