実現不可能といわれた江戸川乱歩の怪作を、魔神・丸尾末広が奇跡の完全漫画化!

更新日:2013/11/13

パノラマ島綺譚

ハード : PC/iPhone/iPad/WindowsPhone/Android 発売元 : KADOKAWA
ジャンル:コミック 購入元:eBookJapan
著者名:丸尾末広原作 価格:429円

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「だが、待てよ、死んでしまうくらいなら、それほどの決心が出来るなら、もっとほかに、方法がないものであろうか。たとえば…」
そうして、私の考えは、だんだん恐ろしいほうへ、向いていくのでありました。

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―――江戸川乱歩の有名な一作、人間椅子からの引用であります。しがない椅子職人が、ここから悪魔じみた行いに転じていくわけですが、本作パノラマ島奇譚でも、同様の流れでもって、恐ろしくも狂おしいパノラマ島の建設が始まります。
「死んでしまうくらいなら」
この終わりへの決断から、皮肉にも丸裸になった剥き出しの人間が始まるのです。

本作はあるひとりの小説家、人見広介が恐ろしい計画により巨万の富を手にし、自身のユートピアを作るというお話。この江戸川乱歩きっての奇作を、漫画界の魔神・丸尾末広が漫画化したものです。

両者ともに、ハマる人は大ハマリする事間違いなしではありますが、読み味は非常になめらかであり、むしろ2人の巨匠からいいとこ取りしたような、知らない人にこそ触れていただきたい1冊!

常軌を逸した計画で、売れない小説家から資産家に成り代わり、目指すのはこれまた常軌を逸した理想郷。欲望、願望、煩悩のフルスイングにより現出する魔境のビジュアルは、まさに圧巻です。美や享楽が極限まで充満した世界が、これほどまで暴力的に見えるとは…。

最初から“ウルトラ狂人”が主人公かというとそうでもない、というのもポイントです。人見広介のグズっぷりは、ある種日常的であり、凡庸。(凡庸過ぎてグズ、なのかもしれません)理想郷や夢物語を妄想することだって、誰しもあることです。その平々凡々であるところの彼が、“些細な決断”を下した結果のひとつが本作でありましょう。狂気! とか、幻想! とか、とかくセンセーショナルな部分に眼が行きがちですが、それらが我々からの地続きになっている。この末恐ろしさが、事あるごとに漂っているのが、またなんともいえません…。

「まさかあんな真面目な人が…」
「普段はおとなしくて礼儀も正しく…」
そういったありふれた所にこそ、人間の狂気は潜んでいるのです。もしかしたら、その2つは対極の要素ではなくて、表裏一体、あるいは完全に同一のものなのかもしれませんね。

いやぁ、人間ってなんとも不可思議な生き物です。


“つかみ”からしてコレです

天国か地獄か

ドドドドドドド! はジョジョだけにあらず

推理モノではないですが、明智君も登場します
(C)HIRAI Ryutaro.MARUO Suehiro 2008