10代の少年少女たちが本気サバイバル! 先読みできない展開に心つかまれっぱなし

小説・エッセイ

公開日:2013/6/5

ほたるの群れ1 第一話 集

ハード : PC/iPhone/Android 発売元 : 幻冬舎
ジャンル: 購入元:BookLive!
著者名:向山貴彦 価格:108円

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上橋菜穂子さん、小野不由美さん、荻原規子さんを“ファンタジー三羽烏”と総称したのは金原瑞人さんですが、忘れちゃいけないのがこの方、向山貴彦さん。1999年に発売された『童話物語』はファンタジーファンの心を大きく揺さぶり、以来、待ちに待ちに待ちに待…………っっった新作が『ほたるの群れ』なのであります。

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『童話物語』は、クローシャと呼ばれる世界で懸命に生きる、ちょっと性格のねじまがった少女・ペチカと彼女のもとに舞い降りた妖精を通じて“世界の終り”を描く物語でしたが、本作は一転、ごくごく普通の中学校が舞台となっています。
が。

お話じたいは全然、普通じゃありません。なにせ冒頭からかなりエグい……。十代の子供たちを暗殺者として育てあげる組織「会」、その「駒」である阿坂らが敵対組織の「成駒」を無残にも殺害していくところから始まります。そしてその姿を見たかもしれない少女・喜多見を追って、そして潜入しているらしい成駒ともども排除すべく、阿坂は五倉山中学へ潜入。その喜多見に片想いしているのが主人公・永児なのです。家庭に大きな問題、というよりも悲劇を抱える彼もまた、2つの暗殺組織の闘いに巻き込まれ、必然ともいえる運命の濁流に飲み込まれていきます。

あのですね、人によってはこう思うでしょう。「でもどうせ永児も喜多見も死なないんでしょ? 主人公たちには、ほんとにひどいことなんて何も起きないんでしょ?」と。

否、ときっぱり言わせていただきます。『童話物語』からそうでしたが、優しく柔らかい文体で紡がれていくその展開のなんと非情なこと! というか永児の境遇からして最初から、物語が描かれる以前からかなりかわいそうです。
ほっこりあたたかいシーンの直後に飛び交う血、裏切り、凄惨な乱闘。十代の少年少女が本気でサバイバルするシーンははっきり言って読むのがつらいです。つらいです。苦しいです。

現在、第4巻までで一応「一学期 完」とされていますが、先の読めない壮絶なラストがくるたびに、友人ともども咆哮したものです。

二学期はいつかしら……でも始まったらまたたぶんつらいんだよきっと……と思いながら、理不尽な現実と闘いながら少しずつ強くなり、そして前へ足を踏み出していく彼らから目が離せません。……ていうかね!! ネタバレになるから書けないけど、永児はどうなっちゃうのよねえ!!と未だアワアワしていると言ったほうが正しいです。

というわけで二学期が始まる前にみなさま、夏も近づいてきたことですし、夏休みの課題図書ということでぜひとも全4巻読んでみてくださいませ。

ちなみに幻冬舎さんのサイトに連載中の番外編マンガもおすすめ。→こちら


扉に掲載されるかなり不穏な唄

冒頭から、クーラーボックスに押し込められた娘を見ながら殺される父という、なんとも無残な……

永児のクセ「スイッチを切る」――これがのちのち、大きく物語に影響します

かなり緊迫感のある戦闘シーン

マンガはかなりほっこりできておすすめ!

設定集もちゃんとおまけについています

カスタマイズも細かくできてうれしい
(C)向山貴彦/幻冬舎