今の恋人と結婚すべきか? 一世一代の決断に統計学は有効なのか?

2013/6/5

統計学が最強の学問である

ハード : PC/iPhone/Android 発売元 : ダイヤモンド社
ジャンル:ビジネス・社会・経済 購入元:BookLive!
著者名:西内啓 価格:1,382円

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勘と経験と度胸(KDD)で大口をたたく。権威をかざし、根拠なき意思決定を強要する。貴方の傍に大口ビッグマウスはいませんか?

そんなKDD大口野郎が跋扈する現代に、ITをたずさえ、キラ星のように登場したのが、「Knowledge Discovery of DB」(KDD)。いわゆる今日のビッグデータ狂想曲です。

大きいものに巻かれがちの事大主義的私たち。あなたは新しい“ビッグ”を信じますか?

「統計リテラシーのない者がカモられる時代」
「統計学は最善最速の正解を出す」
「統計学を制する者が世界を制する」、、、。

見出しだけを見ると、何だかこちらの方が、大口ビッグマウス野郎に見えるほど(汗;)。ですが、統計学なんて「私には関係ない」と(今後もカモられる!?)可能性の高い人(私;)には、これぐらいビッグに強調されなければ手に取らなかったかも知れません。

・「あみだくじの必勝法」
・「コレラの感染拡大の防止法」
・「落ちこぼれゼロの教育法」
・「大リーグ貧乏球団の必勝法」
・「各国における経済成長の因子」
・「若者の失業を救ったニューディール政策」
 などなど、歴史を通じた豊富な事例解説で、統計学のビッグな強力性と必要性と最善性が楽しく学べます。

□ DMの送り方をかえるだけで売上げが60億円アップする

これまでの勘と経験と度胸(KDD)で大口をたたく旧いビッグな権威者たちが、ビッグデータの解析し、最善の解を出す新しい時代のKDD「Knowledge Discovery of DB」に駆逐される。そんなビッグの交代劇も目の当たりにします。

さらにこんなケースも。
「ミシンを2台買ったら1割引」で売上げはあがるのか? といったこれまで一笑に付されていたバカな思いつきも、スモールな実験コストでスモールに試すと…なんと友人を誘って売上げ3倍! と思いもよらない結果をもたらした“攻めの統計学”のケースも紹介されます。ビッグデータ時代は、周密なスモール実験が支えるのです。

しかし私が、本書で最も着目したのは、統計学の3つの限界の中のひとつ。

「一回生の壁」

いまの恋人と結婚すべきか? 企業買収をかけるべきか? といった一世一代の決断に統計学は無力なのです。データがひとつしかないということは、誤差も標準偏差もなく、たったひとつの値が平均値であり、最大値であり、最小値である。そんな時お出ましなのが、なななんと、勘と経験と度胸(KDD)なのです。

みなさんは、「水際の飛び込む順番を譲り合い逡巡するペンギン」の話を知っていますか? 海の下にいる捕食者オットセイに食べられる死の記憶が、逡巡につながっているのです。できれば先に飛び込んだ仲間の結果を見てから決行したいが、いつまでも待っていれば、これまた餌にありつけずに飢え死にする。

オットセイに食べられる死と、餌にありつけて生きながらえる生の確率は、統計的に死:生=10:90だとしても、たったひとつの命を生きる(一回生を生きる)n=1のペンギン当人に取ってみれば統計データは無意味なのです。
その逡巡を突破し、進化の駒を進めたのは、まぎれもなく勘と経験と度胸(KDD)。

不確実性の海からどうやって、持続的な繁栄のための果実を得るか? これは、ペンギンも人間も同じなのです。

勘と経験と度胸(KDD)のビッグマウスに頼るか? 「Knowledge Discovery of DB」(KDD)のビッグデータに頼るか?

一回生の最善の決断は、感と確率の間、新旧のビッグKDDの間、ビッグとビッグの間に潜む
小さな揺らぎも逃さないスモールな切実さ。つまり、生への切実さから生まれると、(筆者の熱い「おわりに」を読んで余計に)実感しました。


統計学を知っていれば、あみだくじで当たりを引いて、ひとりだけ使いっ走りにいくことも避けられる。しかし、この世には、知ってた方がいいカラクリと、知らない方が興冷めしないカラクリがある。人生も恋愛も文学も、ましてや、友人とのあみだくじもその範囲。ズルを助長したり(脱倫理)、ドキドキがなくなる(脱一回生)のは、統計学の本意でない

ビッグデータへの世界のビッグプレーヤーの熱狂もビッグ! IBMが05~11年にかけ、統計学がらみの企業買収に投じた資金は、140億ドル。また、スポーツへのビッグデータの適応もビッグ。2012年11月のオマーン戦で決勝点を挙げた岡崎慎司の背後にもビッグデータが。戦術、パスの出し方、試合中の動き方や選手間のコンビネーション決定に、データ・アナリストが何十万というプレーの映像を分析しているという。けど知らない方が楽しめる

溢れるビッグデータから、意味ある束を抽出し、物語へ昇華させる。その因果を仮説・検証・推論できる編集力こそ、ビッグデータ時代の本当のリテラシーである。ビジネスインテリジェンスのインテリジェンスは、インテ(間に)+レゲーレ(組み立てる・読む)の意。つまり組み立てているものの間に何があるかが見える、もしくは、書いていないことが読める能力、と言ったのは佐藤優氏。その意味では、無数の星屑がある夜空に、星座を布置できる古代人のインテリジェンスは、相当なものだったはず

エビデンスのヒエラルキーの中で、最高のエビデンスといわれるのが、系統的レビューとメタアナリシス。やはり最高のインテリジェンスは、歴史に学び(系統的レビュー)、視点の次元を上げる(解析の解析=メタアナリシス)。つまり視点の時空次元を上げる事なのである