青春文学の旗手・辻村深月が描く、身の毛もよだつヒューマンホラー!

小説・エッセイ

更新日:2013/6/10

ふちなしのかがみ

ハード : PC/iPhone/Android 発売元 : KADOKAWA / 角川書店
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:BookLive!
著者名:辻村深月 価格:626円

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恐いもの見たさ。手で顔を覆いながらも、指の隙間からそっと覗いてしまうような感覚。見ちゃいけないのに、見たい。いけないことなのに、したい。読んだら、絶対に恐くなってトイレにいけなくなるのに、明日も早いんだからもう寝ないといけないのに、読まずにはいられない。『ふちなしのかがみ』はそんな短編ホラー小説集だ。

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この本には5つのショートストーリーが収められている。チュートリアルの徳井義実主演で『世にも奇妙な物語』の原作ともなった、「踊り場の花子さん」。ブランコ事故で亡くなってしまった小学生の死の真相に迫る「ブランコをこぐ足」。認知症になった祖母の部屋を片付けるととんでもないものが出て来てしまう「おとうさんしたいがあるよ」。恋に悩む女子中学生が禁断の占いに手を出してしまう「ふちなしのかがみ」。クラスの中心でありたいと願う少年が、”見えない友だち”と出会う「八月の天変地異」。

ホラーなんて子どもだましだろう等と侮ることなかれ。この本は、大人のためのホラー小説なのだ。夢中で話した学校の七不思議。こっそり試したコックリさん。好きな人との未来を知りたくて試した占いやおまじないの数々。幼い頃は、誰でも何となく霊的世界を身近に感じていたのではないだろうか。そんな懐かしい世界をリアリティたっぷりに描き出している。かつて自分が経験したことだからこそ、自分も同じ目線に読めるから入り込みやすい。読めば読む程、さあーっと血の気が引いていく感覚がする。どくどくと胸が鳴る。張りつめた空気がこの本の中に閉じ込められている。

青春ミステリの旗手、辻村深月だからこそ、この小説は描けたのだ。クラスの中心で居たい。あのグループの一員でいたい。親友が欲しい……。子どもらしい、幼く純粋な想いや危なっかしい感情の機微を鮮やかに描き出している。だからこそ、物語の恐ろしい展開にも現実味が増していく。この本は、ただ恐怖だけを感じさせるのではなく、読後にそっと切なさを添えている。かつては子どもだった全ての大人へ読んでほしい1冊だ。


幼い頃感じてた感情を見事に描き出していて、懐かしい気分で読める

ホラーと言っても、妙に現実的だ。だからこそ、余計に恐い

初恋の描写もリアル。ああこんな時代もあったな、という気にさせられる

子どもだからこそ、ついてしまう真っ赤な嘘が、彼らを成長させていく
(C)辻村深月、角川書店