【上半期BOOK OF THE YEAR(小説)4位】 木の上からのラジオ放送。DJアークの声が聴こえるだろうか…?

小説・エッセイ

2013/6/17

想像ラジオ

ハード : Windows/Mac/iPhone/iPad/Android/Reader 発売元 : 河出書房新社
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:紀伊國屋書店Kinoppy
著者名:いとうせいこう 価格:1,209円

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想ー像ーラジオー。今ジングル鳴っています。
読みはじめた瞬間から、私は熱心なリスナーになっていました。

DJのアークは、身の上話などを軽い口調で語りだします。 そんな楽しげとも感じる話の最中なのに、じわじわと落ち着かない、不安な気持ちに支配されていくのです。それはアークの今の状況があまりに突飛過ぎるから―。「町を見下ろす小山に生えてる杉の木」「ほとんど頂点あたりに引っかかって、仰向けになって首をのけぞらせたまま町並みを逆さに見てる」「左手に握っているのは開いたままの防水携帯」「枝の上に体が白黒のハクセキレイが一羽」。これはいったいどういう状況なのか。徐々にその不安は確かなものになっていき、真相がほぼ明らかになったところで1章が終わります。

その後が気になって仕方ないところですが、2章で場面は大きく変わり、現実的な世界の話となっていく。被災地から帰るバンに乗る5人の人物が話す死者への思いは、意見の対立はあっても皆真剣。そしてそれは、私達も実はぐるぐると考えを巡らせていることなんじゃないでしょうか。

真剣に死者を思う5人に対し、死者達はどこか明るく描写されています。テンポもよくてとぼけた感じなのに、その裏の哀しみも強く感じられて、切ないような愛おしいような感覚になるのです。それは全体的に登場人物が細かく描写されていて、ひとりひとりに愛を感じるからかもしれません。それに加えて絶妙なタイミングのDJアークの選曲! まぁ、私は洋楽に疎いので、それこそタイトルから“想像”するしかないのですが…。いつかここにある曲を集めて読みながら流したいです。

読後は、穏やかな、やさしい気持ちになりました。 でもそれだけじゃなく、いろいろな感情が渦巻いているようにも感じます。想像する―。ということの持つ力。じっくり考えたいと思います。多くの人に読んでもらって、感想を聞いてみたい。そんな作品です。


冒頭。突如始まったラジオ。しかも想像、とは?

この軽さについ笑ってしまうが、言い知れない不安を感じる

ひとりひとりの人物エピソードが濃い。その中でもガメさんは素敵だ

同じようなことを考えることもある。が、答えは出ない

明るく楽しげなコーナーの裏には…