以前読んだという人も、また読み直す時期かも。中年以降のマスト本

小説・エッセイ

更新日:2012/3/7

書を捨てよ、町へ出よう

ハード : PC/iPhone/iPad 発売元 : KADOKAWA
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:電子文庫パブリ
著者名:寺山修司 価格:540円

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あまりにも有名なこの一冊ですが、恐らく、中学生の頃に読んで「勢いのあるおっさんだな~」ぐらいの印象のまま、読み返さずにきて二十数年。作家であり、詩人であり、劇作家であり、メディアの寵児でもあり、映画監督でもあり写真も撮っていた、ありとあらゆる表現方法を使って表現を重ねた寺山修司

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年をとって自分も中年になり、人生のいろいろを経験してみてからの寺山修司は、まさに一期一会、目からうろこの1冊。

普段、自分が使っている言葉はなんだったのだろう、と思ってしまうほど、寺山修司の言葉=生命力。彼の文章には「生」と「魂」が宿っているように思えます。言いたいことを言い放つ作家やメディア人は今日でも多いですが、その言葉の中に「詩」がある人というのは皆無に近いのでは。寺山の綴る言葉には、情緒があり、旅愁があり、リズムがあり、勢いがあり、生きているその姿勢とそのままに胎動しているという生命感が溢れている。賭け事が好きで、一時は競走馬のオーナーにもなったほどの競馬好き。馬を語るとき、競馬を語るとき、それは飲み屋のおっちゃんの酔い言のようであり、でもその中にきちんと人生の慈愛や悲哀、おかしみがしみ込んでいる。

う~ん。読み始めから読了まで約1時間弱(328ページ)。ココロはすっかり寺山の故郷の弘前に飛び、津軽半島を眺めていました。前半は短編がぎっしりつまり(競馬や賭け事関連の話が多い)、最後の章では、詩作や、傑作の「ブレイ(注・「プレイ」ではなく無礼の意)ボーイのすすめ」「家出入門」「自殺学入門」「歌謡曲人間入門」がまとめられています。

サラリーマンの平均的な一生を嘆き、毎日おなかをすかせていても、一度はマキシムで食事をするような「一点豪華主義」を奨励し、「賭けることは一つの思想的行為である」と宣言する作家。反体制的なのに、きっと、1967年刊行時の日本人に普遍的に受け入れられたであろう言葉の大波小波。「しかし、本当に怖いのは、実は原爆でもお化けでもなくて、『何も起こらない』ということなのではないだろうか」という問いは、書かれて40年以上経った今も、そのまま大命題として残っているのでは。圧巻の1冊。これから何度も読み返す本になりそうです。


「ぼくは速さにあこがれる。」で始まる第一章。この宣言からして寺山ワールドに一気に引き込まれてしまう

マッチョな思想をダイレクトに書きつけても納得させられてしまうのが寺山マジック