「桶川ストーカー殺人事件」に迫ったジャーナリスト魂を感じる「凄い」ドキュメンタリー

ビジネス・社会・経済

2013/6/22

桶川ストーカー殺人事件―遺言―

ハード : iPhone/iPad/Android 発売元 : 新潮社
ジャンル: 購入元:Kindleストア
著者名:清水潔 価格:※ストアでご確認ください

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「桶川ストーカー殺人事件」とは、1999年に埼玉県桶川市で実際に起こった事件。高崎線桶川駅前で白昼堂々女子大生が刺殺される、という最悪のケース。被害者友人の証言からこの殺人事件に異様な何かを感じた写真週刊誌『FOCUS』の記者は、独自に調査を敢行。精力的な取材で常に警察に一歩先んじ、結果自らが犯人グループを特定してしまう。同時に捜査本部の置かれた埼玉県警上尾警察署の不正・怠慢を指摘。これが世間を巻き込む一大センセーションを巻き起こした。

この作品『桶川ストーカー殺人事件-遺言-』は、件の『FOCUS』記者・清水潔氏によるノンフィクション。結果的に事件から一番近い場所に居た著者による、渾身のドキュメンタリーである。

この事件のことは本当に良く覚えている。事件当時の被害者の服装や持ち物にブランド品が多く、職歴として“キャバクラ”と報道された覚えがある。残念な事にこの報道を疑う事なく鵜呑みにした僕は、短絡的に「刺された方も問題」、とすら思っていた。しかし、犯人逮捕以降に報道された内容は実に衝撃的。尋常でない危険を感じ、助けを求めた被害者とその家族を冷たくあしらった上尾署のずさんな対応や告訴状の改竄などが日を追う毎に明らかにされて行った。一連のニュースを見聞きするたびに報道を単純に信じた自分を恥じたし、上尾署に対しては強い憤りを感じた。

注目すべきは実質的にこの事件を「解決」したのは、民間の一雑誌記者である、ということ。この作品の中で、清水氏は自虐的に自らを「三流雑誌記者」と揶揄するが、著者の使命感と行動力は賞賛に値するすばらしいもの。単行本から文庫になる際にはその後の重要な局面を新章として新たに書き下ろし、ドキュメンタリー作品としての完成度を更に上げていく気概もある。これこそが真のジャーナリズムであり、清水氏こそが正しいジャーナリストである、と考えるのはきっと僕だけではないと思う。

この事件を皮切りに警察組織の世間的信用度は一気に地に堕ちた。僕自身も「警察は市民のピンチを必ずしも救ってくれる組織ではない」という思いを強くしたし、今も警察に対する信頼はほとんどない。そして世間的には決して評判の良くなかった『FOCUS』という雑誌が「芯のある硬派で格好いい雑誌」に変貌したのも事実。この事件以降、僕は抵抗なく『FOCUS』を認めたし、定期的に購読するようにもなった。何よりもこの殺人事件を機に「ストーカー規制法」が制定される事になる。そのキッカケを作ったのが「警察」という公務組織ではなく、写真雑誌『FOCUS』の一取材記者であったのは、紛れもない事実なのだ。

ノンフィクションだから、もちろん実際に起こった出来事。しかし犯罪の内容も警察の対応も、あまりに非道すぎて逆にリアリティが稀薄になる程の精密な記録文書でもある。このKindle版は現場写真や加筆された章なども完全収録した文庫版を元に電子化されたもので、事件資料としての価値も高い。「人間の異常さ」を知ることができ、「ジャーナリストの魂」が滲み出るドキュメンタリーの手本。被害者の冥福を祈ると共に、このような「凄い作品」を世に出してくれた作者に、心より感謝する。


標準端末のKindle Paperwhite 3G画面、ディスプレイ全体を照らす内蔵ライトで読む場所を選ばない

Kindle Paperwhite 3Gでの書籍選択画面、オリジナルデザインの表紙がキチンと表示される

iPadのKindleアプリ画面、リンク・ルビなどのバランスが絶妙

iPadを横表示すると掲載写真を見開き表示、FOCUS誌にも掲載された貴重な写真を数点掲載

iPadのKindleアプリ画面、リンク・ルビなどのバランスが絶妙

iPhoneのKindleアプリ画面、Kindleは同期機能が強力で、リビングでKinde PaperwhiteやiPadを使い、満員電車で続きをiPhoneで読む、などの使い分けができる