恋愛系? フシギ系? 読者で顔が変わるカメレオンな空気系(っぽい)コミック

公開日:2013/7/3

そんな未来はウソである(1)

ハード : PC/iPhone/Android 発売元 : 講談社
ジャンル:コミック 購入元:BookLive!
著者名:桜場コハル 価格:540円

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テレビアニメ化もされ、根強い人気を誇るコミック『みなみけ』の桜場コハルによる、なんだかフシギな、いわゆる空気系っぽいコミック。「空気系っぽい」という歯切れのよくない表現は、コレ、仕方がないことです。だって、設定はなかなかにヘビーで、ともすればシリアスを激走してもおかしくない内容だから。これを一見ライトにサクッと読めるように描いているのは、さすが作者の力量。『みなみけ』ファンにはわかってもらえるはず。

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設定は、すこしフシギ系。メイン人物は、女子高生2人です。ひとりは、人と目を合わせず、人付き合いをせず、教室のすみでひたすら気配を隠している、おとなしい大橋ミツキ。もうひとりは、同じく人付き合いをしないけれども、思ったことはズケズケというキツめの佐藤アカネ。

なぜ、ふたりは人付き合いをしないのか。
ミツキは、目が合うと、その人の未来が少しだけ見えてしまうため。気味悪がられず、普通に生活をしたいミツキは、人と距離を置く。
アカネは、ウソをつくと、それがすぐにわかってしまう。真っ直ぐなアカネは、ウソを適当に流すのが疲れるので、面倒な人付き合いを避ける。同じ教室で縁がなかった2人は、ミツキがアカネを“占ってしまった”ことから急接近。アカネの未来が見えてしまったミツキと、ミツキがウソをついているのがわかっているアカネ。ここに、クラスの高山クンが加わって…。

といっても、劇的な展開や、葛藤、ぶつかり合いなどのたぐいはありません。そこは空気系。奇妙な人間関係が織りなす会話が、とても魅力的。背景の書き込みや人物の表情は極めて抑えられているのに、高度に引き算がなされた会話がドラマ性を高め、人物に感情移入をさせます。むしろ、表情が薄く背景が白いことによって、読者は無限に想像力が掻き立てることができる、といったほうがよいのでしょう。

最近の生徒は、空気を読む術に比較的、長けているといわれます。実際の教室では、突然声を荒げたり、追い詰められて叫んだりすることはめったにありません。しかし、ひとりひとりのしぜんな表情やさりげない言葉のなかには、ときに複雑な心境や苦悩などが潜んでいます。本作には、リアリティがあります。

『みなみけ』に続いてテレビアニメ化が期待される本作。アニメが始まるまえに、誰か略称、考えてください。


ミツキとアカネの、ファーストコンタクト

最低限の無駄のない書き込みで、読者の想像力を掻き立てる

アカネの強引さで高山クンが巻き込まれ…いわゆる三角関係ではない、フシギな変角関係ができあがり
(C)桜場コハル/講談社