うつや気分障害についての知識は自分自身や大切な人を救うカギとなるかも

ビジネス・社会・経済

2013/7/7

うつと気分障害

ハード : PC/iPhone/Android 発売元 : 幻冬舎
ジャンル:趣味・実用・カルチャー 購入元:BookLive!
著者名:岡田尊司 価格:821円

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かつて製薬会社が「うつは心の風邪です」という広告をうったことがありました。

患者の方が少しでもクリニックにかかりやすくなるようにと、偏見を払拭する意図も込められていたのですが、しかし実際、うつ病は風邪のように簡単にはいきません。現在、うつ病の治療を受けている患者数は100万人を超えると言われており、また2012年の自殺者数は15年ぶりに3万人を下回ったものの(H25年3月14日警視庁発表より)、自殺者の少なくとも90%に広義の精神障害が認められ、そのうちの約半数がうつ病であるという報告がありました(H23年2月24日厚生労働省発表より)。

さらに本書によれば、従来「うつ病」だとされていた人の約半数は、実は双極性障害(躁うつ病)であることがわかり、うつと躁うつを含めた「気分障害」が激増。自分では病気と気づかぬうちに対人トラブルや異性問題、失職、浪費等の失敗を繰り返す場合も少なくないそうです。

「気分障害」でくくられるうつ病は、うつだけがみられるタイプの「単極性」と、躁とうつの両方が見られる「双極性障害」に分けられます。さらにうつの大小や細かな症状の違いで、10種類以上に分類。その症状は微妙に異なり、とても複雑です。第1章では実例をもとに、どのような症状が「双極性Ⅱ型障害」や「新型うつ病」であるのか、従来のうつ病との違いを解説します。気分障害はタイプによって経過や治療が異なるため、見極めが重要とのことで、第4章ではそれぞれの特徴と注意点に触れています。

とても気になる、気分障害を引き起こす原因については、ストレスや個人のパーソナリティ、遺伝、家庭環境のほか、薬剤やアルコールなどが誘因となる場合もあり、こちらも多岐に渡ります。現代人に気分障害やうつが急増している要因として、ライフスタイルの急激な変化なども挙げられています。

驚くのは、そもそもうつ状態が認められるのは、動物の中ではほ乳類だけだという事実。子供や仲間を喪失した際や、実験的に生命の危機にさらされた絶望的な状況におくと、無抵抗な状態、つまりうつを思わせる反応を見せるそうです。しかし太古の採集狩猟民にはそうした症状はみられず、彼らは悲しみや傷つき体験から回復する力をもっていたのではないかと推測されています。

具体的な治療や回復法については、生活改善、薬物療法、認知行動療法などが紹介されていますが、著者は重度のうつ病に悩まされた社会学者、マックス・ウェーバーの例を挙げて、彼が妻の理解や支えによりそれまでのライフスタイルを変え、仕事を辞め、南国コルシカで転地療養したことが、回復につながったのではないかと考察しています。

気分障害を抱えた人は、純粋で生真面目な人が多いそうです。無理のないライフスタイルを築けるよう、周囲がサポートすることも必要かもしれません。


こんなにも細分化される気分障害の数々。その診断や治療の現場は、日々激変しているのだとか

欄外コラム的に、古今東西の著名人の闘病エピソードが挿入されていて、理解を助けてくれます

「一人の時間」という概念が存在しない採集狩猟民は常に仲間や家族と行動を共にし、そのことが気分の安定に寄与していたとのこと
(C)岡田尊司/幻冬舎