本当にムカつく主人公だ(笑)

ライトノベル

公開日:2013/7/13

ガガガ文庫 灼熱の小早川さん(イラスト完全版)

ハード : PC/iPhone/Android 発売元 : 小学館
ジャンル: 購入元:BookLive!
著者名:田中ロミオ 価格:616円

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まず、申し上げておかなければならないことがある。冒頭で、ヒロイン小早川千尋さんが手にしていた(主人公、直幸にだけみえた)炎の剣とか、そういうのより重要なこと。このあと、どんなバトルシーンが待っているのだろう? と楽しみにしているラノベ読者には特に断っておきたい。

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主人公、飯島直幸はムカつくやつだ。中学からテニス部で、高校でもテニス部に入り、世渡り上手で、クラスの最大派閥の連中をやや見下しつつも、彼らとうまくやっている。これは、そういう人間の目を通して読むことになる作品なのだ。テニス部のモテキャラなんてものは、医大生のいとこなみにうっとうしい設定だと思っている、古いオタクにとってはつらい。

でも、この作品は現実問題として、テニスが得意な王子様や医大生が大いに受けるということから逃げない。それにバトルはあるが、悪いのはこいつです! というボス敵を設定しない。とてもラノベで扱うのが難しいような材料に真っ向から勝負している。

物語は、高校一年となった直幸のクラスが舞台だ。崩壊目前の、どうしようもないクラスだ。その崩壊に立ち向かう、孤高の小早川さんと、そんな小早川さんに関心を寄せる直幸の一年間を綴っている。

構図としては、男女ふたりが敵に立ち向かう話だ。だけど、ふたりだけが知る世界であるとか、そういう方に逃げては行かない。教室から逃げ出さない。画面の向こうに逃避もしない。主戦場は教室。

やっていることは、『やはりオレの青春ラブコメはまちがっている』に近い。ただ、比企谷が「こちら側」の代弁者だとすれば、直幸は最初「あちら側」の人間だ。そんな彼がどういういきさつで小早川さんと交流していくのかをみてほしい。


ラノベだが、ビジュアルを意識することはほとんどなかった

「軽口のリターン」!? ほのかに春樹臭を漂わせる直幸の語り

リア充の欲求はハードル高いな

打算だらけの直幸もやがて、小早川さんのまっすぐな姿勢に向き合おうとする
(C) 田中ロミオ/小学館