恐怖の種をばらかまれて日常が不条理な恐怖ワールドに一変
公開日:2013/7/18
「心配の種」という言葉があります。心配や気がかりの原因…という意味で用いられます。子どもも大人も、学校や会社、日常生活において心配の種は付きないものであります。さて、本作のタイトルは『不安の種』。言葉のとおり、不安の原因がググっと詰め込まれた1冊。注意してください。本作を読んだ読者の日常生活には、不安の種がばらまかれます。覚悟を。
本作は、恐怖を描いた2ページから6ページほどの超短編集。怪談あり、ホラーあり、都市伝説っぽいものあり、ちょいグロあり、ときにはSFっぽいのにいっちゃっているものもあります。バラエティーに富んでいますが、一貫しているのは、不条理であること。
怖い物語というと、最後に「◯◯だから、こんな事件が起きたのだ」「◯◯が今回の出来事につながったのだった」といったように、恐怖の結果を原因と結びつけることで読者を納得させるものが多かったのですが、今では逆に「原因不明」「突然起きた」といった不条理なもののほうがリアリティーをもって真に恐怖を感じさせ、読者にうけているといった傾向がある、と聞きます。
まさに本作は不条理の集合体。いわば、怪談の百物語で最後の恐怖部分だけを抜き出して1冊にしてしまったもの。心底、怖いです。
学校の放課後、誰もいない教室で。
静かな下校途中で。
頭を洗っているときに。
夜、窓から外を見ていたら。
インターホンが鳴ったので覗き穴を見たら…。
誰もが日常で体験している、または体験したことがあるシチュエーションで、想像を超える不条理が起き、何気ない日常が一瞬で恐怖の世界に変わります。容赦なく。残酷に。「くるぞくるぞ」と身構えてフリックでページをめくってもムダです。さすが、インパクトある恐怖描写でカルト的人気を誇る作者の代表作。
「ちょっと大げさなんじゃない?」と疑うあなた、ぜひ一読を。
そして、本作のファンにとっては、待望の映画化。7月20日に公開となります。下記の公式サイトをチェック。
夕方の6時過ぎまで学校に残っていたら、「遊ぼうオジサン」が玄関に現れる
「あれ…なんかデカくねえ?」「ん?」
頭を洗っていると…
「ああ…間違えた」って…。急に現れると、人って驚くことすらできないらしいですね
(C)中山昌亮/秋田書店