羊の皮を被った「ゆる~い」本格ミステリー♪
公開日:2013/7/22
新本格推理の旗手としてデビューし、現在もその最前線を突っ走る稀代の「騙し屋」、歌野晶午の2007年作品で、全6章からなる連作短編集。「本格推理」とカテゴライズされる場合が多い作家だが、この作品はちょっと毛色が違う。作者本人も認めるゆる~いミステリー、いわゆる「ゆるミス」。確かにタイトルだけ見るとなんとなくライトノベルのような気がしないでもない。
ただし、その内容は実に戦略的。思いっきりタイトルになっている「舞田ひとみ(11歳・♀)」ちゃん、実は主人公ではないし、コナンや金田一的な少女名探偵でもない。こんなことを書いちゃうのもなんなのだが、下手すればダンスの描写もほとんどない。しかし読後には間違いなくひとみちゃんが将来有望な11歳の名探偵ダンサーであることを認識する。タイトルの醸し出す「ゆるさ」でさえ、重要な伏線にしてしまうのだから凄い。
以前、『葉桜の季節に君を想うということ』をレビューした時にも感じたのだが、本格を謳いながらも文体は軽快で、読書に難解さや面倒くささを一切感じない。各章の連携も実に自然で、前章ですっきり解決した筈のエピソードが見事につながっていく。小難しさ等は一切なく、ストーリー展開だけでミステリーマニアを引っ張る技量こそが、新本格推理の旗手たる所以。もちろん展開に無理がある部分も皆無なので、読後の爽快感も大したモノ。いやぁ、巧い!
この作品、Booklive!でなんと無料配布中! ミステリ好きなら間違いなくハマれる作品・作家なので、未読の同輩はこのチャンスに是が非でも入手すべき。読後、絶対にこの作家の他作品が読みたくなると思います。
そして、続編の『舞田ひとみ14歳、放課後ときどき探偵』が気になる! どうやらこちらはまだ電子書籍化されていない模様。早々の電子化を期待してます!
光文社文庫オリジナルの表紙あり、カラーだともっと良かった
iPad版BookLive!Readerの横位置標準画面、シンプルで読みやすいのだけど、もう少し装飾が欲しい気がする
目次は本編の他にメニューからのジャンプも可能
随所にロック系・ディテールの細かい記述多数、機材オタにはたまらない「メロトロン」「ミニモーグ」「テルミン」などの文字が躍る
BookLive!Readerの設定画面、わりと細かな設定が可能
(C)歌野晶午/光文社