非リアの理想的な「いちゃラブ」話
更新日:2013/7/22
この作品を語る上で、ちょっと知っておいてほしいことがあるんです。いわゆる「ギャルゲー」という呼称より、「美少女ゲーム」(商標)と呼んだ方がしっくりきていた頃のことです。当時は、身も蓋もない言い方になりますが、えっちぃシーンがあれば、その他のパートはどうでもいい、というような感じでしたよ。
ところが、だんだんと時代が降りてくると、本質がえっちぃ絵を拝むことから、ゲーム内で女の子と会話したりすることに変化していくのです。本書の作者、風見周の言葉を借りると「ギャルゲーは日常パートこそが至高だよね!」という風に考えるユーザーが増えていったのでしょう。
というわけで、ようやく本題の『僕と彼女がいちゃいちゃいちゃいちゃ』についてです。本書ではのっけから、僕こと沢渡由吾は獅堂さんといちゃいちゃしまくりです。ただし、ラブストーリーではないという前提があって、恋人は幼なじみの飛鳥井さんという別の人だったりします。
「なに!? そんなサオ師みたいなやつが主人公だと!」と、思うかもしれません。実際、いちゃいちゃすることで「ある」ミッションを遂行しているので、サオ師とみることも可能だと思いますが。でも断ずるのは待ってくださいね。先にも書きましたように、このお話は「日常パート命!」で作られているのです。いかに後ろめたい気持ちになることなく、可愛い女の子といちゃいちゃ出来るか? という1点にのみ特化しているのですよ。そのために用意された設定はかなり強固で、往年の名ギャルゲーも真っ青です。
一方で、ストーリーは(いい意味で)あるような、ないような…。とってつけたような、世界を左右するような使命だとか、運命だとか、そういうのとは無縁です。最後まで、由吾くんが女の子といちゃいちゃするためだけに世界は存在しています。そんなすがすがしい日常に生きる由吾くんが、とてもうらやましい1冊でした。
さくっと、登場人物の一覧。整いすぎな絵も作風と合ってます
現実では絶対にあり得ない会話も、また楽しい
冒頭からいちゃいちゃしていますね…
ちょっと悟ったようなことを言うのも、ギャルゲー主人公っぽい
本音炸裂のあとがきより
(C)風見周、高品有桂/メディアファクトリー