ついに単行本化! 市川春子が描く「戦う宝石たち」の物語が満を持して登場!

公開日:2013/8/5

宝石の国(1)

ハード : PC/iPhone/Android 発売元 : 講談社
ジャンル:コミック 購入元:BookLive!
著者名:市川春子 価格:540円

※最新の価格はストアでご確認ください。

投稿作でアフタヌーン2006年夏の四季大賞受賞。『虫と歌 市川春子作品集』が第14回手塚治虫文化賞の新生賞を、『25時のバカンス 市川春子作品集Ⅱ』ではマンガ大賞2012の5位に選ばれた新鋭作家が世に出す、初の長期連載作品が堂々の登場です! 戦う宝石たちの美しくも可憐な力強さをどうぞご覧あれ。

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舞台は遠い未来の地球。宇宙規模の異変により人間は滅んでいます。そしてこの世界で生きているのは、人の形によく似た28の宝石たち。海に沈んだ人間を微生物が喰らい、無機物に分解し、長い時間をかけて結晶化し、海に打ち上げられた命のある無機物。彼らは体内に内包する微生物のおかげで陽光があれば動け、またいくら体が砕けても傷口をつなぎ合わせれば生き返る、という基本的に不死な存在となっています。まさに敵なし、怖いものなど何もない、かと思えば実はそうではなく。なんと、宝石たちを砕いて装飾品にしてしまおうと襲撃してくる「月人」という天敵がいるのです。後光が似合う美しい姿で現れ、無言のまま欲望に忠実に宝石を狩る姿は地味に不気味で大層無残でした。

本作の見所は、なんといっても生き生きとした宝石たちのキャラクター。
主人公のフォスフォフィライト(通称フォス)は「何物をも通さない堅牢無比な不器用の地層」の持ち主で、さらには硬度が低くとても壊れやすい宝石であり、自分でも「生まれた時から役立たず」と言い切ってしまうほど何の仕事もできませんでした。それでも本人は至って快活で我が儘な自信家で、「月人と戦いたい!」と言っては周りから止められ、先生から博物誌の担当を仰せつかった時も「地味!」という理由で嫌がるという、見ていてスカッとする自由人ぶり。生まれのハンデに対してこの性格だというのが、ただの気ままではなく芯の強さを伺わせ、フォスの魅力となっています。

他にも、シンシャという、宝石たちにとって致命的な毒を生み出し、それを制御できない影を負ったキャラクターや、不器用で乱暴だけど戦士としての技量は最高のボルツ、その相棒でボルツのことを大好きなのだけれど戦士として嫉妬するダイヤなど、愛憎が入り混じった宝石関係も見逃せません。世界の謎はまだまだ多く、今後どのように世界が展開されていくのか。一時たりとも目が離せません!


月人と戦いたがるフォスですが、それには致命的な弱点が多すぎて…

「俺が息をするだけで土も草も死んでいくのに」自分でも制御できない毒を嘆くシンシャ。涙でさえも毒になってしまうところが切ない

愛しているけど疎ましい、庇われてばかりで募る劣等感。ダイヤがボルツに向ける愛憎混じりの感情はこれからどうなるのでしょうか
(C)市川春子/講談社