松本清張賞受賞作が電子化! 戦時下の上海で語られる、ある女の悲恋譚!

小説・エッセイ

2013/8/5

月下上海

ハード : PC/iPhone/Android 発売元 : 文藝春秋
ジャンル: 購入元:BookLive!
著者名:山口恵以子 価格:1,132円

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嫉妬に狂った女を表した般若のお面は、時に恐ろしく、時に悲しそうにも見える。愛されたいという願望と、愛されていないのだという悲哀。どんなに強かな知性の持ち主だろうと、大切な人に愛されていないという思いは、人を強くもすれば、弱くもする。この物語の主人公・八島多江子もそのひとり。愛する人への嫉妬からスキャンダルを逆手にとり人気画家にのしあがった過去を持つ女だ。

『月下上海』は長編エンターテイメント小説の登竜門、第20回松本清張賞受賞作。小説を書いて苦節数十年、普段は某企業の「食堂のおばちゃん」をしているという著者・山口恵以子自身のキャラクターとともに話題となっている。昭和初期の令嬢のファッションや上海の描写の華やかさ、読み始めれば一気に最後まで引っ張られる筆力に魅せられるに間違いない。

時は、昭和17年。八島財閥令嬢でありながら当代の人気画家でもある、八島多江子は、戦時統制化の日本を離れ、上海にやってきた。上海で個展を開き、自分の画風もさらに進化させるのが目的だったが、そこで、招聘元である中日文化協会に潜入していた憲兵大尉・槙庸平にある任務を強要されることとなる。それは、民族資本家・夏方震に接近し、重慶に逃れた蒋介石政権と通じている証拠を探すというスパイ行為。「協力を断れば、8年前の事件の真相をマスコミに公表する」との槙からの脅しから多江子は渋々任務を受けることとなる。8年前、多江子の身に何があったのか? 彼女は夏から情報を聞き出すことができるのか? いけ好かない槙とどう向き合っていくのか?

暗さを背負った男たちの行動に、毅然と立ち向かう多江子の行動にスカっとさせられる。だが、八島多江子の驚くべき強かさの一方で、時折見せる弱々しさをもこの本の魅力。様々な表情を見せる多江子にいつの間にか虜になっていく。愛とは何なのか。戦争とは何なのか。男女問わず、読んでほしい1冊。


表紙から美しい。主人公のイメージをよりしやすくさせている

昭和初期でありながら、八島多江子のファッションは華やかだ

多江子はスパイ活動をしなくてはならなくなる。だが、気丈なそぶりは崩さない

辛い過去を抱える多江子。一体8年前、彼女の身に何があったのか?
(C)山口恵以子/文藝春秋