映画鑑賞の前に、親子の読書に、一度は必ず読みたい1冊

小説・エッセイ

公開日:2013/8/6

少年H(上)

ハード : PC/iPhone/Android 発売元 : 講談社
ジャンル: 購入元:BookLive!
著者名:妹尾河童 価格:594円

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8月は原爆記念日や終戦記念日で必ず戦争を考えさせられる時期です。夏休みの読書感想文で必ず戦争ものを読んだという方も多いのでは。日本のこうした記憶を風化させない教育というのは世界にもまれなのではないでしょうか。書店にもこの時期戦争関連の書物が並びますが、すでにこのジャンルのクラッシックと化してきた『少年H』も97年に出版されたものが今回電子書籍化。その感動は紙でもデジタル画面でも全く変わりませんでした。

「H(エッチ)」こと妹尾肇少年が過ごした少年期は、まるまる戦争前中後に重なります。子供の視点で見る、あの時代が上下巻2000ページ弱もつづられて、読後にこれほど、「どっ」と精も根も尽きた感じがした読書も久しぶりです。

戦争へと加速してゆく国家。疑問ばかり起こる「国体」という言葉。子供たちの前でなんとか体裁を保ちながらも混乱する大人たち。モノのない中でも笑おうとしている子供たち。母親の持つ「信仰」」と「愛」を前に哲学をせざるを得ない「H」。スタンドバイミー的な少年の成長を、始めは親の気持ちで読んでいましたが、中盤には私もすっかり「H」自身になっていました。それほどに、主人公「H」の心のひだと日常がリアルに描き出され、当時の生活と戦争を追体験できます。こと天皇によって終戦が告げられ、それから自分を失って行く「H」の姿には涙が止まりませんでした。

そしてなんとあの時代の子供たちの逞しいこと。生きる力と知恵を子供の姿を通して大人が学べる作品だと思います。戦争文学というジャンルに入れるには、あまりにリアルで「文学」の域をはみ出ている生命力が本作品にはあります。子供も読めるように全ルビを敢行。夏休みに親子で同じ1冊を読むなら、絶対にこの1冊です。8月10日に公開される映画を観に行く方は観る前の読書がマストです!


海に山に自由に遊べた戦争前。すべての感覚が野山で育ってゆきます

戦前のエピソードのなかでも「オトコ姉ちゃん」の章は強烈

空襲に焼けた我が家を見る父と子。親子の中にも礼儀を感じて泣けます

Hの中にいつも渦巻く「なぜ」という問い。それがまっすぐに生きるのが難しい時代の支えでもあり
(C)妹尾河童/講談社