女子の本音トーク後みたいなさわやかな痛みが走る作品

小説・エッセイ

2013/8/23

青空感傷ツアー

ハード : PC/iPhone/Android 発売元 : 河出書房新社
ジャンル: 購入元:BookLive!
著者名:柴崎友香 価格:486円

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これはたくましいお話だ。とてもたくましい。女の子ふたりがでてくる。大阪弁。軽快。女の子というのは、弱い。男の子も十分弱いんだけど、女の子には女の子なりの弱さがある。あやうさ。女の子なりの弱さを抱えたこのふたりは、それを自覚することなく旅に出る。弱さを、たくましくぶつけ合う。さわやかな痛みが走る。

 

作家、柴崎友香さんの作品は『ダ・ヴィンチ』でもプラチナ本として紹介され、その多くが電子書籍にもなっている。量と質が携帯で読むのにちょうどよい気がする、重すぎず。そしてもの足りなく感じる軽さもない。この『青空感傷ツアー』は、非日常と日常の上手い隙間を縫って私たちに届く。だからどんなにありふれた場面に自分がいたとしても(電車の中とかね)すっと物語の中に入ってゆける。ちっぽけな携帯ひとつで、おおきな気分転換、空想の下手になった大人が、恥ずかしがることなく浸かれるちょっと違った今。そんな感じでおすすめである。

さてお話の主人公はしょっぱな特に取り柄も見つからない25歳女子で、いかにも普通な女、という感じ。きれいなもの、きれいな人が大好きで特に目標もなく、振り回されたりぐずぐずしたり、いかにも対応が普通。目先のこともなんとなく考えるつもりがないように見える。しかしこやつが主観で物語が進められるため、読者ははじめその性質に気付きにくい。もうひとり音生(ねお)というのは超美人な女の子。なにもかもきれい。きれいが故に傲慢、自己中、そして風変わりなくらいさばけている。この音生が失恋したので主人公を振り回しつつ旅に出る、というお話だ。まず大阪。それからトルコ、四国、石垣島。いかにも思いつきのツアー。道中随所に出てくる過去の男たちも、そこまで魅力はない。

本作のみどころは、隠しつつもむきだしな主人公と音生の弱さ。立ち向かおうとしているわけじゃないのに生きていると自然とぶつかってしまうその弱さが、あまりにもさわやかで痛々しく、生きている彼らにたくましさを感じてしまう。なにかが変わるわけではない、大きく説教をするわけでもないこの物語に、なんとなく親近感がわく。女子の本音トーク後みたいな気持ちになれるのだ。うわべ的な女子会が大好きなふりしてなんとなく居心地悪いと感じる誰かさんや、そんな誰かさんをするどく見極める誰かさんや、とにかく小さな痛みを抱える女性のみなさんにぜひ読んでいただきたい(いや、男性にももちろんなのだけれど)。おすすめの一作である。


きれいで性悪な音生。それを眺める主人公

関西弁悪口はどこかすがすがしい

数少ない、胸温まるシーン

ここまで正確にはっきりと言われたことあります?(笑)