冤罪で死刑宣告。そして監獄での闘い…。なんて理不尽な世の中だ!

公開日:2013/8/28

デッドマン・ワンダーランド 1巻

ハード : PC/iPhone/Android 発売元 : KADOKAWA / 角川書店
ジャンル:コミック 購入元:BookLive!
著者名:片岡人生 価格:583円

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地に足つけて生きようとも、この世で人は大海に浮かぶ1枚の木の葉だ。世界は一定のリズムを刻んで動いているようでいて、いつどんな波が起きるか予想だにできない。何が原因で振り落とされ、暗い海の底に沈むかも分からない。不条理で非情な世界だ。自分の運命を呪って、身を投げるのは容易い。だが、逆境にめげずに確固たる自分を失わずに何度でも立ち上がることがこの世界で生きるということなのだろう。

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片岡人生・近藤一馬の共著『デッドマン・ワンダーランド』はコミックスの累計発行部数500万部、2011年にはアニメ化もされた大ヒット作品だ。連載6年目にて遂に完結を迎えることになり、8/26にはコミックス最終13巻が発売された。夫婦2人で作りあげられた作品と聞くと、一瞬、何やら甘い展開を期待してしまうものだが、この漫画の世界はひたすら理不尽。上手くいった! と思うと足下を掬われ、困難や絶望が目の前に現れる。遊園地のような特殊な監獄「デッドマン・ワンダーランド」を舞台に特別な能力を操る人々の戦いや危機的な状況で成長していく主人公に胸が熱くなることだろう。

主人公・五十嵐丸太はごく普通の中学生。10年前に東京を襲った大災害「東京大震災」により長野へと疎開し、クラスメイト達と平凡な生活を送っていた。しかし、ある日突然、丸太の通う中学校で大量殺戮が繰り広げられる。人では到底考え得ないような特殊な能力で、「赤い男」はクラスメイト達を殺害。唯一生き残った丸太は、何故かその殺人の犯人に仕立て上げられ、無実の罪のまま死刑囚となってしまう。完全民営化刑務所「デッドマン・ワンダーランド」に送られた丸太は、自分が「赤い男」の手により「罪の枝」と呼ばれる特殊能力を持つ人間「デッドマン」になっていたことを知る。他のデッドマン達との戦い・交流を繰り広げながら、丸太は「赤い男」への復讐を目指していく。

「狂ってようが狂ってまいが、不条理こそが現実だろ。」ストーリーの中で看守はこんな台詞を吐き捨てるが、丸太を取りまく環境はあまりにも厳しい。大切な仲間たちを殺害した犯人に仕立て上げられるのもそうだが、デッドマン・ワンダーランドの監獄内も酷い。東京復興のための観光事業が主な刑務とされる監獄内では死刑囚に常に毒が注入された首錠を付けられ、金を稼ぐことによって手に入れられるキャンディー型解毒剤を摂取しないと死に至る仕組み。「死肉祭(カーニバル・コーブス)」では特殊能力を持つデッドマン同士の殺し合いが見せ物にされ、戦いに負ければ、身体の一部を献体せねばならない。冤罪で捕まった丸太にとってはとんでもない話だ。丸太は決して強くはない。何度もめげそうになる。だが、丸太は決して環境に流されて、自分を見失うことはしない。前を進むことを考えて、何度でも立ち上がる。

ホントにここで描かれている世界は理不尽だ。だが、どんなに弱くても、何度でも立ち上がることの強さを丸太は持っている。その雑草のような根性で丸太は復讐を成功させることができるのか? 手に汗握る展開に目が離せない。


囚人たちのショーやアトラクションが刑務、というデッドマン・ワンダーランド(1巻)

CP(カストポイント)を稼がないと、監獄での生活はままならない(1巻)

「罪の枝」という能力を使う者たちは「赤い男」と丸太だけではなかった(2巻)

このデッドマン・ワンダーランドに「赤い男」がいることを知る丸太(2巻)

楽しかった学校生活を思い出しながら、クラスメイトたちを殺した「赤い男」への復讐を誓う(2巻)
(C)片岡人生・近藤一馬/角川書店