倫理と論理を蹴飛ばして、ギリギリのエロスの世界にヒートアップする男たち

更新日:2013/9/17

封印されたアダルトビデオ

ハード : iPhone/iPad/Android 発売元 : 彩図社
ジャンル: 購入元:Kindleストア
著者名:井川楊枝 価格:※ストアでご確認ください

※最新の価格はストアでご確認ください。

テレビの封印ストーリーを書いていたのは森達也だが、こちらはAVである。機器の方のAVでなしに、大人のビデオ、なんぼのこっちゃのアダルトビデオのAVだ。封印ということでいうなら、もしこれがもちょっと襟を正したお国ならはなっから全部封印されてもおかしくない映像の映っているあれだ。

年に2万本リリースされているらしいといえば、なるほどねで終わるが、日に60本と聞かされると尋常でない気持ちになってくる。いったい日本には何人のAV嬢が棲息しているのか。60人ではあるまい。まして30人なら、1日2本の撮影だ。女工哀史の世界である。

女子にはあまり縁のないAVにしろ、男子はあきれるくらい早い時期から興味を示すありさまなんである。私が10才のみぎり、スカートめくりのはやりだした時分に、まだビデオというメディアそのものが発明されていなかったのは幸いだったのか不幸せだったのか。

そんな私の不幸せがようよう世の中に行き渡り始めたのは、成人もだいぶ過ぎ27、8ではなかったか。レンタルビデオ店はまだない。路地裏の販売店で1本1万いくらで肌色のパッケージが恥ずかしそうに並んでいたものだ。

それが世の中にひろまった頃から当然のこと、過激な方向に内容の競争が始まった。もっとアブナくもっと露骨に。で、販売停止や発売停止の作品がでてくるわけである。

『封印されたアダルトビデオ』は、そのアブナさの先端で結局のところ闇に葬られざるをえなかった作品の裏事情を、作品のジャンルごとに章立てしてルポした異色の1冊だ。

なぜ異色かというと、AVは完全なる消費物件だから、日常の上っ面を流れ去っていく風俗(エッチな方のじゃなくて)考察することにあまり意味がない、考察してもどこへもゆけない、そう考えられているからだ。最近の類書では、『「AV女優」の社会学』というのがあったけれど、ちょっと難しかった。

いや、類書より本書だ。闇に消えたタイトルを取材しながら浮かび上がった理由を、著者はいくつか挙げている。出演させてはいけない者を映してしまったため。これは未成年AVのことでしょう。異国の宗教儀式に参加し国家間のレベルでクレームがきた、トルコで全裸になった江頭2:50を思い出す。出演者の不慮の死や失踪によって延期せざるをえなくなった、林由美香を偲びます。

これらを取材していくうちに、苛烈な競争劇や、社会への意外にも真摯なメッセージ、取り憑かれたような制作者の執念、などなどがあぶり出されて驚天動地の境地である、と著者はいう。

しかし、私がここにみたものは、出しても出してもすぐクズになってしまうものを、倫理と論理の境界を今にも破るようにしてヒートアップし、飽かず次から次へと作り出していくメーカーと、特にスタッフたちの「たまらない」体力だった。なんかほとんど笑える。AVに興味のない方もぜひどうぞ。


ほとんどの人に関係のないハードなSMではこんなことがおこなわれているのだった

女優が未成年でないかどうか制作者側は戦々恐々である

やおいのような状況がAV界でも繰り広げられているらしい

中には実際にあった事件を取り入れた社会派の作品もあるが、やり過ぎでとてもリリースできない場合もあるのだ