1964年、五輪9日前に開通。首都高速道路って、実はすごかった!

小説・エッセイ

2013/9/18

プロジェクトX 挑戦者たち 首都高速 東京五輪への空中作戦

ハード : Windows/Mac/iPhone/iPad/Android/Reader 発売元 : NHK出版
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:紀伊國屋書店Kinoppy
著者名:NHK「プロジェクトX」制作班 価格:108円

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まず申し上げておきたいのは、この「プロジェクトX」の紙の書籍はもともと、1冊に6話分程度が収録されていたということ。この「首都高速 東京五輪への空中作戦」は、『プロジェクトX挑戦者たち<28> 次代への胎動』と題された巻に、たたら製鉄の復活やブランドミシン誕生秘話などとあわせて収録されている。6話入って331ページ、1785円だ。それが電子書籍は、1話独立で、しかも105円という安値で販売された。紙の本をそのまま電子化するケースが多い中、この手法は喜ばしい。

さて、というわけで本編に入る。2020年の東京オリンピックが決定し、おそらくこれから東京はあちこちでいろんな工事が始まるのだろう。交通網も整備されるに違いない。1964年もそうだった。東京オリンピックにあわせて東海道新幹線が完成し、羽田空港の滑走路が拡張された。そしてもうひとつ、オリンピックを睨んで計画され、世界が瞠目したのが首都高速道路だ。

当時の東京は車が過密状態で、特に山手線の内側では至る所で渋滞が起きていた。「今のままでは羽田から選手村まで2時間はかかる」という事態に、早急に高速道路の建設が求められたが、問題があった。既に完成された東京という大都会には、新たに道路を通す余地がなかったのだ。用地買収などやっていてはオリンピックに間に合わないのである。

そこで彼らが考えたのが用地買収の必要ない方法──既存の道路や川の上に高速道路を作るという方法だ。技術的なことはもちろんだが、そこに人間ドラマを搦めてくるのが「プロジェクトX」のお家芸。首都高に携わったキーマンを複数あげ、彼らの戦時中からの生い立ちを交えながら技術者の誇りを描き出す。「実現しない計画は、計画とはいわない」「こういうチャレンジャブルな仕事こそ、俺の仕事だ」といった名言も随所に入る。もちろん脳内で響く声は田口トモロヲだ。

今でこそ渋滞の代名詞のように言われる首都高だが、これを読めば、どれほどの技術の粋が集められ、どれほどの人が寝食を忘れて奔走し、そしてどれほど諸外国を驚かせたかがわかり、瞠目することしきりである。

だが、やはりテレビ番組の文章化なので、絵がないのは辛い。首都高の作りや問題点を説明する際に地名がたくさん羅列されるのだが、地方在住者にはその距離も環境も場所もピンと来ないのである。他にも、江戸の古地図と首都高速の経路を重ね合わせて当時の運河と首都高の経路が一致するという、とても興味深い話が出てくるのだが、このくだりは「番組では、スタジオ部分で国井雅比古・膳場貴子両キャスターが、この地図を紹介した」とあるだけで、肝心の地図は見られない。こういうテーマなら、可能な範囲で地図や写真といった図版を入れて欲しいものだ。本書は確かに技術者の誇りを描いた伝記ではあるが、それと同時に、日本の技術史を一般に知らしめる大事な資料なのだから、読物としての完成度をより高める工夫を望みたい。


本編は三部構成。ただし100%のフォントサイズで55ページ(iPad縦置きの場合)と、通常の短編小説程度の長さ